ジャック・マー氏、アリババ社内向けメッセージの全文

2024/04/18 11:19

アリババの取締役会会長で創業メンバーの1人である蔡崇信(ジョゼフ・C・ツァイ)氏は今年4月のインタビューで、社内を見直しここ数年の状況を振り返った際に、「アリババは遅れている」と言った。「本当のお客様が誰かを忘れてしまったからだ。われわれのお客様は、アプリを使って買い物してくれる人であるが、いい気分にさせてはいなかった。ある意味で、われわれの自業自得だった」とのことである。

蔡氏のこうした言葉は随分と論議を呼んだ。4月10日、リタイヤして5年になるジャック・マー氏は、ニックネームの「風清揚」で、社内向けに「改革へ、イノベーションへ」とのメッセージを発表した。アリババの改革やイノベーション、将来への考えを語ったもので、蔡氏の発言に対してのものとみられる。マー氏は蔡氏や呉泳銘氏といった新たな幹部陣の改革への勇気を高く評価し、「アリババは健全な成長軌道に戻った。引き続き改革を支持する」と述べている。

マー氏のメッセージの全文は以下の通りである。

改革へ イノベーションへ

——アリババの組織替え1周年に寄せて

ここ数日、いろいろな人がJoeのインタビュー映像を送ってくれた。「この映像はわれわれの過去の誤りを認めるもので、器が大きい」とのコメントがあった。その通りだ。Joeの勇気や責任に感謝する。誤りは怖くない。過ちをしない人はおらず、一番怖いのは誤りを知らず、認めず、改めないことだ。

これまで25年間、アリババ人は幾度も成功を収め、多くのイノベーションや先行もあった。しかし、この25年に数々の過ちも犯しており、これからの77年も同じように誤り続けるだろう。問題を認める、それは過去を否定するためではなく、責任をもってこれからの道を探ることだ。過去を恨まず、人を憎まず、時代は変わり、われわれは時代についていくべきで、昨日の問題をきっぱり認めてすぐに正し、そして将来に向けて改革をする、これこそわれわれが歩み続ける理由なのだ。

去年はメッセージで、「アリババは改まる、アリババは変わる」と書いた。この1年、蔡氏と呉氏は立派な勇気や頭脳で、アリババに対し、将来を見据えての様々な改革を施していった。

この1年で一番の変化は、KPIにとらわれず、己を知り、顧客価値の基本に立ち戻ったことだ。われわれは大企業病にメスを入れることにより、効率と市場を最優先する考えを取り戻し、シンプルで身軽になった。新たな幹部陣は問題に直面し、将来に直面し、若者を信じ、若いスタッフに十分権利を与え、われわれがすべきこととそうでないことについて、思い切ったより分けをした。われわれの理想主義への思いや「誰もしたことのない商売」という使命はいつまでも変わらないけれど、この1年間で新たな幹部陣が数々の変化を果たし、昨日の固まった戦略を打ち破ったほか、これからのアリババを作っていった。

これまでずっと、B2Bからタオバオへ、そしてアリペイへ、さらにアリクラウドへ、われわれのイノベーションは決してより高い利益を求めるためではなく、変化の速い時代に生き残ろうと努力するためだ。われわれのイノベーションは人を変えるためではなく自分を変えるためだ。われわれのイノベーションはまた、決してライバルを超えるためではなく、未来に追いつくためだ。イノベーションは流行を追うためではなく、本当のサバイバル力の試練だ。心から認知を覆し、いつまでも自分に挑戦し、絶えず人がやらないこと、したくないこと、やらなかったことをとするように求めている……

技術が大きく変化するこの時代、インターネット業界にとって3年から5年というスパンは100年に匹敵する長さで、パラダイムシフトが起きるには十分な時間だ。3年後のECはきっと今一番人気のECではないだろうと思っており、……重要なのは今日誰に追いつくかではなく、明日のECはどうすれば気分良く使えるものにするか考えることで……AIの時代は到来したばかりで、全てが始まったばかりだ。われわれは今そこにいる。

この1年、様々な疑念の声や重圧を受けた中、頑丈で勇敢なアリババスタッフの誕生を見た。改革を語りイノベーションを語るに、怖いのは改革やイノベーションをスローガンにすることだ。改革やイノベーションは痛いものだ。改革は犠牲が必要で、イノベーションは少しずつ自分を苦しめるものだからだ。組織改革と再編はスタッフ一人一人にも影響する。この1年、任務に当たってくれた全てのスタッフに感謝する。そして、目まぐるしい変化の中で、IPOするか否かの決断までもが変わる中でも、信頼し、耐えてくれた皆さんとご家族に感謝する。皆さんに敬意を示す。皆さんの粘り強さでアリババは健全な成長軌道に戻ってきた。

改革やイノベーションの道は決して喝采は伴わない。「改めるのはわれわれが一番好きな悪習であり、変えるのは既得利益だからだ……道は長いけれど、みんなで行けば寂しくない。これからは、もっと前向きに、もっと自発的でスピーディーに自分を変えて、一段と改革に力を入れなければならない。それでこそ、はつらつとしたアリババを築き上げられるのだ。

がんばれ、アリババ!

風清揚2024.4.10

(中国経済新聞)