中国証券監督管理委員会(証監会)は、債券情報に虚偽の内容があったとして約8か月前から実施していた中国不動産大手の恒大地産(EVERGRANDE REAL ESTATE GRIUP)と創業者の許家印(きょ かいん、シュー・ジアイン、Xu Jiayin)氏に対する調査の結果を発表した。
これによると、恒大地産は2019年と2020年の決算報告書に虚偽の記載をしたほか、証券詐欺など一連の違法な行為をしたとして、同社および当時の上級幹部に対し行政処罰を下し、債券市場への参入を禁ずる措置を講じるとのことである。
証監会の発表では、恒大地産は売上高について、2019年には全体の50.14%にあたる2139.89億元(約4.48兆円)が、2020年は同じく78.54%にあたる3501.57億元(7.32兆円)が水増し分であった。さらにコストや利益も水増ししており、投資家や市場に大きな誤解をもたらした。また、2020年~2021年に社債5件を発行したが、その際に書類に虚偽の年間決算データを引用していた。発行額は約208億元(約4350億円)に達している。
さらに今回の調査では、恒大地産は2020年1月1日以降で、定められた期間内に発表しなかった重大な訴訟や仲裁案件が計1533件、不履行の債務が2900件以上に上っていることが分かった。対象金額は前者が合計4312.59億元(約9.02兆円)、後者が2785.31億元(約5.83兆円)となっている。
証監会はこれらの違法行為をした恒大地産に対し、「中華人民共和国行政処罰法」や「証券法」などにより、業務改善を命じ、警告を発した上41.75億元(約873.2億円)の制裁金を科した。また当時の会長であった許氏と取締役会副会長兼総裁の夏海鈞氏も含めた複数の幹部にも警告を発した上、それぞれ個別に300万元(約9.8億円)~4700万元(約6274万円)の制裁金を科した。
この中で、許氏と夏氏は不正行為の中心的役割を果たした上、手口も非常に悪質で罪状が重いとのことで、証券市場から永久追放となった。また当時の財務統括であった潘大荣氏や恒大地産の最高経営者であった潘翰翎氏など、それ以外の幹部についても、最高で10年間にわたり証券市場への参入を禁止とした。
恒大地産はこうした違法行為で市場の秩序を著しく乱したほか、会社の信用や事業にも甚大な影響が出ている。1997年に広州で発足し、「中国恒大グループ」の国内の中軸的存在である恒大地産は中国各地で事業を展開しているが、今回の件で改めて不動産界の決算の透明性や信頼感が問われる事態となっている。
恒大地産の経理処理については以前から業界内で疑問視されており、特に2021年までは売上高を事前確認する形で利益を大幅に水増ししていた。しかし2021年に資金繰り苦しくなってこの方法は変更せざるを得なくなり、契約負債が一気に増えたほか、株主の権益も大幅ダウンした。それまでの会計処理の問題や不正経理がさらけ出てしまったのである。
(中国経済新聞)