中国のビザ免除を拡大、日本はまだ置き去り

2024/02/18 20:00

現地時間1月17日、ヨーロッパ訪問中の李強総理は、アイルランドのヴァラッカー首相とダブリン迎賓館で会談した際、「両国間の人的往来を円滑化するため、中国はアイルランドに対し、一方的措置としてビザ免除政策を実施する」と宣言した。その先の15日、李強総理は、スイス・ベルンで同国のアムヘルト大統領と会談した際、中国はスイスに一方的措置としてビザ免除を行い、スイスも中国国民及びスイスで投資する中国企業に対しビザ発給に一層の便宜を図るとした。

「ビザ免除」は中国外交の新しい「武器」としている。

中国外務省は昨年12月、入国時のビザ免除措置を巡り、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6カ国を対象に加えると発表した。1年間の試行として滞在日数15日以内の出張や観光のビザを要らなくした。

中国の国家移民管理局によると、12月1カ月間に6カ国から中国に約21万4000人が入国し、11月より3割ほど増えた。このうち5割強がビザ免除措置を利用した入国者だったという。

フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペインはいずれもEU加盟国であり、中国のビザ免除政策の欧州への拡大は、中国と欧州の良好な関係を強化しただけでなく、欧州企業の対中投資に対する信頼も高めると図する。

中国領事サービス網が2023年12月に発表した「中国と外国とのビザ相互免除協定リスト」によると、中国はこれまでに153ヶ国とビザ相互免除協定を締結し、その対象はアジア、欧州、アフリカ、米州、オセアニアの5大陸に及んでいる。

中国は、より多くの国々と相互主義的ビザ政策を絶えず推進し、ビザ相互免除を切口に、中国外交の新形態を豊かにし、発展させてきた。相互主義的なビザ政策は「小」から「大」へと促進され、「点」から「面」へと広がり、中国の特色ある大国外交の全方位的な戦略配置を全面的に開拓・拡大し、中国の開放的な姿勢とグローバルな考え方を政策として具体化し、「実務外交」を実践し、互恵・ウィンウィンの開放戦略を真に遂行し、各国の人々により一層恩恵をもたらすべく尽力し、中国の特色ある大国外交に新局面を切り開き、中国外交の戦略的自律性及び主導性を大幅に高めてきた。

今後、相互主義的ビザ政策を契機に、中国の発展は新たな戦略的チャンスを迎え、中国の特色ある大国外交は、さらに力を発揮できる新たな段階に入ることになるだろう。中国はこれと同様の政策的柔軟性を保ち、より豊かで多様な外交の新形態を切り開くことができる。

しかし、中国が日本人に対する短期滞在ビザ(査証)の免除措置を再開しない状況が続いている。新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ政策」を2023年1月に終え、免除対象国を広げてきたものの、日本は含まれていない。中国人の訪日にも同様に免除する「相互主義」を要求していることが障壁になっている。

中国はもともと日本とシンガポール、ブルネイの短期滞在ビザを免除していた。この措置をコロナ禍により20年春から停止。3カ国のうち、シンガポールとブルネイは23年7月から免除を再開しており、今もビザ申請が必要なのは日本だけだ。

日本の政府や経済界がビザ免除を復活するよう求めてきた。それでも中国は「日本人向けビザを免除するのなら、日本も中国人向けビザを免除しなければ公平ではない」との理由で拒んだ。相互主義に基づく主張だ。

日本政府関係者は「以前は認めていなかった相互主義をいきなり導入するのはハードルが高い」と困惑する。コロナ禍前は中国が日本人の短期滞在ビザを免除していたのに対し、日本側は訪日する中国人にビザ申請を義務づけていたからだ。

日本経済新聞の報道によると、中国で事業展開する日本企業にとって、ビザ手続きの煩雑さは切実な悩みだ。中国に進出する日本企業でつくる中国日本商会は6月、中国当局への要望をまとめた23年版白書にビザ免除措置の復活を盛り込んだ。10月に発表した会員企業対象の調査結果でも事業環境の改善内容としてビザ免除を求める声が相次いだ。

日本内閣府は1月19日、外交に関する世論調査(2023年実施)の結果を発表した。日中関係について「良好だと思わない」「あまり良好だと思わない」との回答は計90.1%で、前回22年調査から5.7ポイント増加した。中国に「親しみを感じない」としたのは「どちらかというと」を含めて計86.7%、日中関係の発展は「重要だと思わない」「あまり重要だと思わない」は計27.8%で、いずれも前回より増えた。中国との外交関係が反映した形だ。

(中国経済新聞)