中国経済、2024年も低迷が続く見込み

2024/02/18 08:30

1月17日、中国国家統計局の康義(Kang Yi)局長は、北京の国務院新聞弁公室会議庁で行われた記者会見で、2023年のGDP成長率が予想していた5.2%に達し、ハイレベルの伸びを維持したと語った。

康局長は、「2023年1年間のGDPは総額126.06兆元で、物価の変動要因を除いた実質成長率は5.2%、2022年を2.2ポイント上回った。2023年は外的な圧力をしのぎ、国内の課題を克服し、国民経済は回復した。世界全体の成長率は3%前後とみられるが、それを上回り、主要国の中では上位で、世界経済の成長分の30%以上を占め、成長の最大のエンジンとなっている。物価の変動を考慮した年間の成長分は6兆元以上で、中進国の年間経済規模に相当する」と言った。

ところがである。こうした見事な結果が発表された直後、上海の株式市況が実に3日連続で値下がりし、2700円の大台を割り込んで3年4か月ぶりの安値を記録した。また、中国のネットコミュニティーでは国家統計局発表のGDPに対して「水増しだ」との声が上がっている。「そこまで高くはないはず。一般庶民の感覚としては、成長率3.2%だった2022年よりもっと苦しかった」と言うのである。

政府の数字と国民の感触が、著しく乖離しているようである。

この主な理由として、2023年の中国経済には2022年には見られなかった状態が生じている。

まず、不動産市場の崩壊である。

中国で不動産大手5社に数えられる恒大、碧桂園、融創などが軒並み債務を返せなくなって経営困難に陥り、上海や北京など大都市の物件価格はおおむね30%前後もダウンした。銀行貸し付けの支援や住宅購入制限の撤廃など、一連の刺激策が講じられた中でも市場は低空飛行を続けており、北京の中古物件は値段を30%下げても買い手が現れないでいる。

景気は回復したが力強さに欠けたのは、不動産不況やリベンジ消費の不発によるところが大きい。債務不履行(デフォルト)・債務返済猶予の状況を見ると、かつて財務の健全性が高かったデベロッパーも相次いでデフォルトやデフォルト寸前に追い込まれている。その数は 33 社に達した。特徴は、民営デベロッパーが実に 30 社を数えた一方で、国有デベロッパーはわずか 3 社にとどまっていることだ(2023 年 12 月 20 日時点)。「民営デベロッパーはデフォルト・倒産の可能性が高い」というイメージが定着し、購入者は民営デベロッパーの物件の購入を回避した。このため、民営デベロッパーの売上は急減し、赤字に転落。資金調達難に陥り、工事中断問題が社会問題化したのである。

杭州や深センでは、住宅ローンの未払いで差し押さえとなった物件数が2022年より40-60%も増えた。

上海に住む会社員の李明さん(男性、35歳)は本社・中国経済新聞の取材に対し、「コロナの前に長者番付トップだった人物が一夜にして負け犬になり、資産が空になった。コロナの前は考えもしなかった事態が現実に発生している。なので、明日も給料がもらえるのか、仕事はあるのか、といった心配感を覚えざるをえない」と語った。

李さんは2023年、予定していた車の買い替えもやめ、また2024年の春節に家族とともに日本へ旅行に行く計画も中止した。「以前は、年に一度の海外旅行なんて当たり前のことだったが、今は違う。家にどのくらい預金が残っているのか考えなくてはいけない。万が一会社を首になったら、一年間食べて行けるかどうか」と言う。

通販業界の二枚看板であるアリババと京東も、2023年は業績が落ち込んだ。例年「独身の日」セールが行われる11月11日の売上高について、2社とも2019年より30%以上も落ち込んだ上、株価も値下がりし、資産も大きく減退した。その一方で、同じく通販の新興サイトである「拼多多」は株価が初めてアリババを上回り、抜群の売上実績を挙げた。

値段の安さが売り物である「拼多多」の株価がアリババを逆転、これはつまり国民の消費が低迷していることの表れである。高価な商品が一段と下火になり、上海で世界のブラントショップが並ぶ延安西路では、店を訪れる客の数もまばらになってしまった。

苦境に陥っているのは一般庶民だけでなく、地方政府も同様である。江蘇省、河南省、遼寧省などでは、高額の債務を抱えて公務員の業績賃金(賞与)が数か月も未払いなどという事態も発生している。

大学新卒者の就職戦線も氷河期であり、大学院進学者の割合が80%にのぼっている。このため、院生の数が学部生を上回る大学も随分多くなっている。

また、民間企業は国有企業より苦しい状態にある。不動産の崩壊で建築材料、家電、リフォームなど深刻な影響を受けている業界はほぼ民間企業で構成されている。注文数が大幅に減っているので、民間企業はおよそ「景気が好転」などと感じないのである。

中国の民間経済はGDPの60%以上を占めている上、労働者の80%以上を抱えている。よって、景気の低迷を脱出するかどうか、民間企業が重要なカギを握ることになる。

2023年11 月 17 日に中国人民銀行、国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会が

開催した金融機関座談会では、不動産金融と、債務が急増する地方政府融資平台(資金調達プラットフォーム)の問題の重点的なリスク解消・減少に関する方針が確認された。このうち、不動産金融については、①デベロッパーの合理的な資金調達ニーズを国有・民営の差別なく満たすこと、②正常に運営されている不動産デベロッパーに対して貸し渋りや貸し剥がしをしないこと、③民営デベロッパーの債券発行などによる資金調達をサポートすること、④デベロッパーが資本市場を通じて合理的なエクイティ・ファイナンスを行うのを支援すること、⑤「保交楼」向けの金融支援に注力すること、⑥不動産業界の M&A(合併・買収)・再編を後押しすること、⑦保障性住宅(福祉型住宅)の建設を積極的にサポートすること、などが指示された。

これが実施されれば、不動産市場の安定化に寄与する可能性があり、今後の動向に注目したい。

大和証券の予測では、中国経済は2024年、一段と低迷する。2023年のGDP成長率が5.2%であれば、2024年は5.0%以下となるという。

よって、2024年の中国経済における最優先タスクは、国民に対し今後に期待を持たせ、お金を使ってくれるように働きかけることである。

(中国経済新聞)