中国、GDP年間成長率5.5%は困難か

2022/05/11 12:55

中国は2022年第一四半期、広東省、上海、山東省、吉林省など各地が再びコロナに見舞われ、経済活動の中心地である長江デルタや珠海デルタがその渦に完全に巻き込まれた中で、GDP成長率は予想を上回る前年比4.8%プラスとなった。

GDP成長率というのは、経済規模を最もよく反映するものである。可処分所得、雇用、企業の利益や開発投資と深く関わるほか、消費や産業の改善が十分に表れ、また国民の暮らし向きや経済力も示される。しかし、現在のコロナ禍を踏まえて、これにいくつかの点を補足する必要がある。まず、損失分をじかに示すものではないこと、次に消費メリットとは一致しないこと、それから雇用および多くの中小企業の存続状況とは一致しない、といったことである。

今後もかなりの下押し圧力に見舞われそうな中国経済であるが、年間5.5%という成長目標は正しい道筋であり、これに向けて努力すると同時に、暮らしに深く関わる消費や雇用に目を向けなくてはいけない。

GDP成長率は損失分をじかには示さない、という点について、中国では四半期のGDPを算出する際、生産面と収入面の両方を見ている。生産面でいうと、コロナ対策による生産の行き詰まりで様々な損失が生じており、収入面でいうと、こうした損は国民や企業や政府が負担し、この結果が労働者の賃金、営業利益、生産活動における税額の減少といった形で現れる。

次に、GDP成長率と消費メリットの不一致について、支出面で言うとGDPは消費、投資、貿易黒字の3種類に分けられ、消費は暮らしぶりの改善を示し、投資と貿易黒字はこれからの暮らしの向上につながるものである。

コロナの影響で消費の伸びがGDPに追い付かず、そのメリットがかなり損なわれている。2022年第一四半期の小売総額について、成長率はGDPをはるかに下回る1.6%プラスにとどまり、2021年第四四半期の3.5%から大きく落ち込んでいる。特に3月は前年比-3.5%であり、中でも飲食業を中心とするサービス関連の消費は前年比-16.4%と、極めて深刻な状況となっている。

さらに、GDP成長率と雇用や中小企業の存続について、コロナ以降は第三次産業であるサービス業の成長率がGDPを下回っている。卸売り・小売、交通運輸、荷役・運送および倉庫業、郵政事業,宿泊・飲食、市民サービス、修理など、エッセンシャルワーカーが頼りとなるサービス業はコロナの影響が極めて重大である。また、これらの業界は大量の雇用者、ならびに零細企業や個人事業主を抱えており、こうした人たちからすればGDP成長率はイメージとは程遠いものになっている。

2022年第一四半期の成長率は、卸売り・小売が-5.1%、交通運輸・倉庫・郵政が-8.5%、宿泊・飲食が-26.7%、リース・商業サービスが-20.0%、教育その他サービスが-6.6%となっている。

上半期のこうした状況から、政府が掲げた2022年の年間目標である5.5%を達成するのはかなり厳しいと見られる。

(中国経済新聞 山本博史)