高齢の母親が子供たちに1.44億円を与えるも介護なし 上海

2023/10/26 17:30

上海市静安区の人民裁判所はこのほど2016-2022年の高齢者介護をめぐるトラブルの審議についての白書と典型事例を公表した。事例の中で、立ち退き時の補償金を次男に多めに与えたことでもめ事になったケースが挙げられている。

4人の子供の母親である82歳の程さんは2021年、自宅の立ち退きで700万元(約1.44億円)余りを手に入れ、その半分以上の400万元(約8200万円)余りを次男に、200万元(約4100万円)余りを長男に与え、残りを2人の娘に50万元(約1025万円)ずつ分け与えた。交替で介護をしてもらおうと考えたのである。

程さんは2か月ほど、長男宅と一方の娘の自宅でそれぞれ過ごしたが、些細なことから家庭内で対立し、やむなく2021年から次男の家に住み始めた。

しかし次男は、お金をめぐるトラブルで自宅が競売にかけられ借金を背負い込んだ。母親と借家暮らしを始め、家賃や生活費、医療代も賄えなくなった。長男と2人の娘は、次男に多額の金を与えた母親の介護費用の負担を拒否した。程さんは立ち退き料の割り当てについてとても後悔し、子供たちが与えたお金で自分の生活費を負担し、足しげく見舞いに来ることを願っていた。

この事例は、年老いた親が高額の財産を子供に与えてしまったことで老後を過ごせなくなった典型例である。裁判所は、対立のそもそもの理由を究明した上、子供たちに「公平な対応」をしなかったゆえにけんかになったことを母親に認識させた。さらに子供たちの家計を調べ、わだかまりを解くように動いた。

最終結果は、子供たちがみな母親の程さんに介護費用として月に800元(約16401万円)を渡す、ということになった。裁判所はその後も、子供たちが介護費用を払っているか監視し、頻繁に程さんを見舞って温かい家庭とするように指導していく。

(中国経済新聞)