政治局会議における三つの任務を読み取る

2022/04/30 22:21

今年の第一四半期、中国のGDP成長率は、新型コロナウイルスや原材料価格の上昇のため4.8%にとどまった。さらに第二四半期は、上海などのロックダウンにより下押し圧力が一段と強まっている。上半期の成長率が4.5%に満たないようであれば、中国政府の掲げている年間5.5%という目標の達成はかなり苦しくなる。

その5.5%確保に向けて、中国共産党中央政治局が4月29日の会議で、経済の下押しを止めるための様々な策を打ち出した。

中国政府最高の意思決定機関であるこの会議で、新型コロナやウクライナ問題によりリスクが増大し、経済的環境について複雑さや厳しさ、不確定性が高まっており、成長や雇用、物価の安定といった面で新たな挑戦となっている、と指摘された。

  このため、現在の社会や経済、暮らしの管理について、コロナの抑制、経済の安定化、安全な成長、という三つの任務が掲げられた。

この三つを見ると、コロナについて、中国政府は「ゼロコロナ」をあきらめない、といった様子がうかがえる。

29日に行われたコロナ対策本部の記者会見で、国家衛生健康委員会のコロナ専門家グループのリーダーである梁万年氏は、「ゼロコロナの実施は、短期的には一部の地域や一部の人たちの生活に不便が生じ、地域によっては経済的にある程度の影響もある。ただし広範囲な地域や市民の正常な生産活動や経済成長ももたらされ、コロナの抑制と経済成長はバランスであり、相対するものではない」と述べている。

この話について、世論の一部で批判の声も上がったが、ゼロコロナを維持するという中国政府の強い立場がはっきり示された。しばらくはこの政策を続けるものと予想される。

上海市のロックダウンについては不満も噴出しており、経済活動の再開は困難であるが、上海を中心とする長江デルタ地帯の経済が滞っても中国政府は5.5%達成という成長目標をあきらめないようである。

今回の政治局会議では、「マクロ政策への調節を強化し、経済を安定させ、経済や社会の年間の成長目標達成に努め、経済を適切な範囲で維持させる」と主張されている。

具体的な内容は以下の通りである。

まずはインフラの全面的な強化であり、交通やエネルギー、水利などのネットワーク系、情報、技術、物流などの産業改良系、また都市部の整備や農業・農村、国の安全保障などに及ぶものである。

次に融資の拡大と減税であり、中国人民銀行(中央銀行) は先ごろ、技術革新や高齢者対策への融資制度を設け、さらに交通や物流への融資を拡大し、石炭の開発利用やエネルギー貯蔵などへの支援、中小企業に対する融資条件の適度な緩和によるコロナの影響の緩和、といった策を打ち出している。

三つ目は経済問題への取り組みであり、供給側について交通や物流の利便化や、主な産業チェーンやサプライチェーン、コロナ対策関連企業、主なインフラの稼働を確保する一方、都市部の主要機能を動かすために生活関連商品の供給を整えるとしている。

四つ目は不動産やIT企業へのサポートである。2021年は不動産企業への融資を抑えたことで、恒大グループなどが深刻な経営危機に陥ったほか、アリババなどIT企業も様々な理由で成長が止まった。今回の政治局会議では、不動産市場の強さや住み替え需要へのサポートが示され、不動産の安定かつ健全な発展を求めている。中国経済を支えてきた大きな柱である不動産市場をよみがえらせるものである。

ITプラットフォームについては、健全な発展を促し、経済面の整備を完成させ、管理体制を定着させて、健全な経済成長を進めるための具体策を打ち出すと強調され、間もなく転換期を迎えるであろう。

政治局会議の三つ目の任務である「安全な成長」であるが、これは長引くアメリカとの対立やウクライナ問題の先行きなどといった国際問題を踏まえているほか、中国国内の政治や社会の安定にも目を向けている。

中国政府にとって、今年秋に行われる共産党第20回全国代表大会を順調に開催することは、極めて重要な任務である。一方で、コロナや経済の下押しにより失業率が高まり、雇用情勢が厳しくなっていることは大きな社会問題である。1000万人を数える今年の高校・大学の新卒生に対する就職問題への取り組みは、社会の安定に関わる。

掲げられた三つの任務で、中国の指導部が現在の様々な問題を十分認識していることが分かり、対策も力強い。ただし、企業の95%が民間企業であるがゆえに、一連の救済・支援策が中小企業を重点とした民間企業を対象にしたものでなければ、出血を早期に食い止め、大量の新卒生への雇用問題を解決することは難しいだろう。

(中国経済新聞 編集長 徐静波)


【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。中国第十三回全国政治協商会議特別招聘代表。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。

 講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。

 日本記者グラブ会員。