中国は3月5日、全人代=全国人民代表者大会の政府活動報告で、2023年の食糧生産目標を1.3兆斤*以上と定めた。食糧の生産量目標が掲げられるのは2021年から3年連続であり、14億人の「胃袋」を満たす取り組みとなる。
*注:中国では重量の単位として一般的に「斤(jīn)」が使われる。一斤は500gです。)
全国政治協商委員で中国社会科学院農村発展研究所の杜志雄(Du Zhixiong)氏は、農作物の価格がこのところの不安定な国際情勢を受けて乱高下しており、サプライチェーンが不安定になっているという。また中国国内を見ると、国民生活が改善するにつれて穀類や肉、卵、牛乳の需要が増え、消費の質が向上し、食糧の直接および間接的な消費が増えており、こうした中で生産目標を掲げることは国として食糧安全保障につながっていくとのことである。
中国国家統計局によると、2022年の食糧生産量は1兆3731億斤で、8年連続1.3兆斤を超えた。ただし中国は面積当たりの人口比も多く、中長期的に見て食糧安全保障のレベルを引き上げることが課題となる。
中国農業科学院農業資源・農業区画研究所の姜文来(Jiang Wenlai)氏は、1000億斤単位の生産増といった取り組みを実行するにあたり、耕地や作付けの整備が大切であると言う。高規格な田畑の整備に一段と力を入れ、耕地の質を高め、農業のさらなる近代的を進め、農業技術や機械化の水準を上げ、「作付けの再整備」をして単位当たりの生産量を伸ばすほか、農作業従事者のやる気を引き出す策も必要であるとしている。
また、全国政治協商委員である河南工程学院の李利英(Li Liying)学長は、「世界最大の人口を持つ中国が食糧安全保障問題を解決すれば、世界の食糧安全保障にもつながる」と述べた。中国は耕地面積が世界の9%を占め、また淡水による食糧生産分は同じく6%、そして人口は20%近くを占めている。2022年の穀類自給率は95%以上で、1人当たりの食糧占有量は世界の平均である400キログラムを大きく上回っている。
(中国経済新聞)