朝、ベランダに寄りかかって東京湾の日の出を眺めていると、ふと切ない気持ちがこみ上げてきた。これは2025年最後の朝日だ。明日もまた昇るけれど、時間は二度と巻き戻らない。
2025年、ついにその厚い一ページを閉じるときが来た。
この年、世界は私たちの願い通りに優しくはならなかった。時代は相変わらず鋭い角を立てて進み続けている。
ニュースには波のように上下する出来事、日常には細かな塵のような出来事。誰もが自分の座標軸の上で、「正常」という名のバランスを必死に保とうとしている。
あまりにも急に訪れる出来事に戸惑い、待ちすぎた答えにはもう問いかけなくなった。
でも、時間の意味は、決して大きな物語の中にはない。それは、朝一番の不完全なコーヒーの中に、 夜更けに自分自身と和解する瞬間に、何度も失敗したあとでも翌朝起きることをやめない、その小さな頑固さの中にこそある。

2025年が教えてくれたのは、もしかしたら「どうやって成功するか」ではなく、「不確実さの中でどうやってしっかりと立つか」なのかもしれない。
私たちは気づき始めた。世界は誰のためにも止まってはくれないし、不安を完全に消し去ることもできない。
本当に大切なのは、喧騒の中で判断力を守ること、孤独の中で尊厳を保つこと、変化の中で自分の心の物差しを失わないことだ。
ある年齢に達すると、少しずつ受け入れられるようになる——すべての努力に報われるわけではないけれど、すべての経験は確かに跡を残すのだと。
この年、壮大な答えはなかった。ただ、少しだけ確信できたことがある。変化はもう「普通」になった。でも、真剣さと誠実さは今でも希少価値のままだった。雑多な情報の中でも判断を保ち、賑わいの中でも冷静さを失わず、複雑な日中関係や世界の激変の中で、できる限り言葉を丁寧に、事実を正確に伝えること——それが読者への、そして自分自身への、最低限の責任だと感じている。
私は心から、この一年のすべてに感謝している。
喜びの瞬間も、試練の瞬間も、成長の気づきも。
そして何より、ずっとそばにいてくれたすべての友人たちへ。皆さんの温かい眼差しと支えこそが、私たちの「中国経済新聞」を続けられる原動力だ。
2025年との別れは、ただ歴史の一ページに手を振ることではない。嵐をくぐり抜け、それでも前に進んできた自分自身に、静かに敬意を表すこと。冬の寒さの中でも届いたすべての温もりに、深く感謝することだ。
もうすぐ新年の鐘が鳴り響く。除夜の鐘が108回、人の108の煩悩を打ち払うように。 私たちもその鐘の音のように、清らかで揺るぎなく、
古い後悔を振り払い、新しい年の光を迎えたい。
2026年、心に感謝を携えて、穏やかに歩んでいきましょう。
みなさん、新年おめでとうございます。どうか健やかで、幸せに満ちた一年となりますように。ご家族皆さまのご多幸を、心よりお祈り申し上げます。
(文:徐静波)
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【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立、代表取締役社長に就任。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。
講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。
日本記者クラブ会員。
(中国経済新聞)
