中国、結婚件数が3年ぶりに増加 婚姻制度改革と各地の「結婚奨励策」が後押し

2025/11/6 13:00

中国で結婚の動きが再び活発化している。民政部が発表した最新統計によると、2025年前三四半期(1~9月)の全国結婚登録件数は515万2,000組となり、前年同期の474万7,000組から40万5,000組増加した。結婚数の増加は3年ぶりで、若年層を中心とした結婚意欲の回復を示すものとみられる。

結婚・出産支援を強化 「婚育一体」政策が進展

ここ数年、中国政府は少子化対策の一環として、適齢期の結婚と出産を促す政策を相次いで打ち出してきた。特に「婚育支持体系」の構築が進み、結婚から出産・育児までを支援する仕組みづくりが進展している。

その一つが婚姻休暇(結婚休暇)の延長だ。現在、全国31省のうち29省が婚姻休暇を延長しており、山西省と甘粛省では最長30日間の休暇を取得できる。結婚を「人生の節目としてゆっくり祝う時間」として位置づける傾向が強まっている。

「全国通办」で婚姻手続きが自由に

今年5月10日から施行された改正《婚姻登记条例》(婚姻登記条例)により、婚姻登録の地域制限が撤廃された。これにより、戸籍地に関係なく全国どこでも結婚登録が可能になり、住民票や戸籍簿の提出も不要となった。

厦門大学の丁長発副教授は「非戸籍地で働く人にとって、経済的・時間的コストが大幅に削減され、幸福感の向上にもつながる」と指摘している。

「婚登+文旅」ブーム 観光地で“旅先婚”が人気

婚姻登記が全国どこでも可能になったことで、観光地での「旅先婚」も増えている。各地の自治体や観光地は「結婚証明書の聖地」として新たな名所づくりに力を入れ、「婚登+文旅(文旅=文化・観光)」の新市場が生まれつつある。

2025年8月29日の七夕(中国の伝統的な恋人の日)には、制度改正後初の「全国通办」対応の七夕として多くのカップルが婚姻手続きに訪れた。上海市では当日2,310組が結婚登録を行い、このうち1,130組が他省から来たカップルだった。これは過去10年間で最多の七夕婚件数となった。

各地で「結婚奨励策」 結婚消費券や現金ボーナスも

地方政府による結婚奨励策も相次いでいる。浙江省の複数都市では新婚夫婦に「結婚消費券」を配布し、結婚関連消費の活性化を図っている。湖南省も「出産支援政策10項措置」を発表し、条件を満たす新婚夫婦に結婚祝い金や消費券を交付する方針を示した。

また、山西省呂梁市では、2025年1月から初婚かつ女性が35歳以下の夫婦に対し、1,500元(約3万円)の現金ボーナスを「紅包(お祝い袋)」の形で婚姻登記窓口で即時支給している。

さらに、広東省東莞市や広州市白雲区の一部村落でも、結婚祝いとしてギフトや金券を配布する取り組みが広がっている。

結婚を“地域振興”の契機に

婚姻制度の改革と各地の支援策が、結婚数の回復を後押ししている。専門家の間では「結婚奨励は出生率の向上だけでなく、地域経済や観光振興にもつながる」との見方が強まっている。

少子化が深刻化する中、中国は“結婚のしやすさ”を政策の中心に据え、人生の門出を社会全体で支える体制を整えつつある。

(中国経済新聞)