近年、中国ではペットを“家族の一員”として扱う風潮が一層強まっている。ペットの食事から医療、娯楽、保険、さらには葬儀まで、「擬人化」された消費が次々と登場し、産業の裾野を急速に広げている。研究機関の試算によると、2028年にはペット関連産業、いわゆる「“它(タ)経済”」の市場規模が1兆元(約22兆円)を超える見通しだ。既存の大手企業だけでなく、異業種からの参入も相次ぎ、AI技術や海外市場をめぐる競争が新たな焦点となっている。
■ 食品から葬儀まで 広がる“擬人化”の消費空間
北京市内に住む高さんの家庭では5匹の猫を飼っている。「エサ代や医療費はもちろん、猫の機嫌にも気を配らなければなりません。迷子になった時は専門の“探猫隊”を呼んで2,500元もかかりました」と話す。それでも、「この子たちが家族にもたらす癒やしには代えられません」と笑う。
中秋節(旧暦8月15日)の前には、会員制スーパー「サムズクラブ」に“ペット用月餅ギフトセット”が登場し、SNSでは多くの飼い主から好評を得た。ペットのための季節商品や贈答品は、もはや珍しくなくなっている。