中国・小鵬(シャオペン)匯天、ドバイで飛行車の有人公開飛行を実施 中東で600台の大型受注へ

2025/10/14 11:30

中国発の飛行車メーカー・小鵬(シャオペン)匯天(HT Aero)が、10月12日にアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで最新世代の分体式飛行車「陸地航母(Land Aircraft Carrier)」の海外初となる有人公開飛行を実施した。同時に、UAEやカタール、クウェートなど中東諸国の企業と計600台の購入契約を締結。中国の飛行車としては最大規模の海外受注となった。

公開デモでは、パイロットがペルシャ湾沿いを安定飛行した後、滑らかに着陸。飛行計画および機体はUAE民間航空局とドバイ民間航空局の審査を経て承認を受け、関係職員が安全性と適法性を確認する中で実施された。また、車体と飛行体が自動で分離・合体する「陸地航母」独自の機構も披露された。

同イベントでは、小鵬匯天とUAEのAli & Sonsグループ、カタールのAlmanaグループ、クウェートのAlSayerグループ、そしてUAE中華工商総会との間で、600台分の初回注文契約が締結された。納入は2027年を予定しており、調印式には中国の欧渤芊(オウ・ボセン)駐ドバイ総領事やドバイ王室関係者も立ち会った。

■ 地上と空を自在に往来する「陸地航母」

「陸地航母」は地上走行体と飛行体の二部構成を採用。地上部分は全長約5.5メートル、幅2メートル、高さ2メートルの三軸六輪設計で、一般的な駐車場にも収まるサイズ。普通自動車免許(C免許)で運転可能だ。一方、飛行部分の操縦には専用の飛行免許が必要となる。

車体後部には飛行体を格納する後備艙(こうびそう)が備えられ、世界初の自動分離・格納システムを搭載。飛行体を自動で展開・収納できるほか、地上走行時には移動式の超急速充電ステーションとして飛行体に電力を供給できる。

飛行体は電動六ローターと二重ダクト構造を採用し、炭素繊維製の機体で軽量化と強度を両立。操縦は手動・自動の両モードに対応し、一本レバーによる操縦システムと自動航路機能を備えることで、操作のハードルを大幅に下げている。

■ 「中国智造」の象徴として中東進出

欧渤芊総領事は「今回の首飛は商業的な成功にとどまらず、中国の低空電動飛行技術が国際化へ向け大きく踏み出した象徴だ」とコメント。中東諸国との標準づくりや市場構築などで協力を深め、「中国の知恵と技術」が地域のイノベーションを後押しすることへの期待を語った。

ドバイ民航局のアリ・アフマド・アル・ブルーシ氏も「中国の飛行車技術は、ドバイが掲げる『空のモビリティ』構想の実現を加速させるだろう」と述べ、中国の技術力を高く評価した。

■ 世界市場で7000台超の受注

小鵬匯天の杜超(ドゥ・チャオ)副総裁兼CFOは「中東は戦略的市場であると同時に価値あるパートナー。先進的な政策と革新性を兼ね備えた地域で、当社のグローバル展開の理想的な出発点となる」と語った。

小鵬匯天は小鵬汽車のエコシステム企業であり、アジア最大規模の飛行車メーカー。今回のモデルを含む分体式飛行車の累計受注はすでに世界で7000台を超えているという。

同社の広州工場は9月末に完成し、年間1万台の生産能力を備える。2026年の量産開始を予定しており、フル稼働時には30分ごとに1台の飛行体を出荷できる体制となる。

■ 拡大する世界のeVTOL市場

ボストン・コンサルティング・グループが9月に発表した「中国有人eVTOL産業白書」によると、電動垂直離着陸機(eVTOL)市場は「短距離の個人飛行」と「長距離の空中移動」を二軸に急成長しており、2040年には世界市場規模が2250億ドル(約33兆円)に達する見込み。中東市場だけでも117億ドル(約1.7兆円)に拡大すると予測されている。

――ドバイの空を舞った「陸地航母」は、空の移動が日常となる未来を現実へと近づけた。中国発の飛行車が描く“次世代モビリティ”の青写真が、いま世界の注目を集めている。

(中国経済新聞)