2025年8月31日、天津で、上海協力機構(SCO)の首脳会議が開幕した。ユーラシア大陸の加盟各国が改めて一堂に集まり、安全保障や連携について話し合い、さらに経済やエコ化、デジタル化の未来を探った。貿易額や経済規模も拡大の一途をたどり、ユーラシア大陸における1兆元(約20.65兆円)規模の経済圈が過去にない速さで台頭している。
2024年は中国とSCO加盟各国との貿易額が5124億ドルとなり、加盟国の経済規模は24年前の発足当初の13倍となった。過去を振り返ると、SCOは元々は経済に関する組織でなく冷戦終結後の複雑な地域情勢への対応策として生まれたものだ。安全保障を軸としていた国際組織が今、経済成長を果たしている理由とは何か。
SCOは元々、ユーラシア大陸を安定させる「重石」となることが主旨だった。「相互信頼、互恵、平等、話し合い、多様な文明を尊重し共同発展を求める」という中心的価値は「SCO精神」と呼ばれる。こうした理念のもと、加盟国は大小を問わず平等な立場で話し合い、協力する。シンクタンク「Initiate Futures」のハムザ・レファット会長はまさに、「SCOの一番の良さは『非干涉』だ。それゆえに相互信頼の『水位』が上昇の一途をたどっており、中国-キルギスーウズベキスタンの鉄道建設などの『世紀の工事』が実行され、パキスタンも中国に通じる経済回廊により確かな成長への力を獲得している」と指摘している。

「SCO精神」をより所に続々とパートナーが増え、当初6か国だった加盟国は10か国に増え、オブザーバー国と対話パートナーが計16か国という大所帯になっている。提携の規模も拡大しており、2024年の加盟国間の貿易総額は8兆ドルを超え、世界の貿易額の4分の1を占めた。また中国とヨーロッパを結ぶ貨物列車はこれまでに11万本以上運行され、ユーラシアの大動脈になっている。ロシアの学者デニソフ氏は、「こうした平等や互恵を基盤とした提携モデルは地政学的な影響をほとんど受けず、おのずと加盟を望む国が増えていく」と述べている。
天津の首脳会議では、エコ化やデジタル経済が新たなキーワードとなった。中央アジアは再生可能エネルギーが豊富に存在し、中国はエコエネルギーの生産について世界をリードしているので、提携のチャンスが生まれる。またデジタル小売や越境EC、AIといった業種が成長している。2024年、SCO加盟国におけるオンライン販売の市場規模は3.2兆ドルを超え、世界の半分以上を占めた。上海外国語大学の楊成教授は、「AIとデータサイエンスが成長を支える存在となる中、中国は質の高い成長を目指す各国へ好機をもたらすべく経験をシェアしたい」と述べている。
(中国経済新聞)