太陽光発電といえば、通常は太陽光パネルを使った「光伏発電」を思い浮かべる。しかし、甘粛省の広大なゴビ砂漠には、きらめく鏡で発電する巨大な施設が広がる。その規模は想像を超える。これが「光熱発電所」だ。
光熱発電所は「スーパーミラー発電所」とも呼ばれる。光伏発電と比べ、連続的かつ安定した電力供給が特徴。基幹電源としての可能性を秘めた新興技術とされる。甘粛省で訪れた2つの光熱発電所――敦煌首航100MW溶融塩タワー式光熱発電所と、世界初の溶融塩リニアフレネル式50MW光熱発電所――は、この技術の最前線を示す。

敦煌首航100MW溶融塩タワー式光熱発電所は、中国初の100メガワット級光熱発電所。2018年12月27日に甘粛省敦煌市で完成。中国最大規模で、吸熱塔の高さは260メートル。24時間連続発電が可能だ。敷地面積は7.8平方キロメートル。1万2000面以上の定日鏡が同心円状に吸熱塔を囲み、総反射面積は140万平方メートルを超える。
2016年に国家太陽熱発電実証プロジェクトの第1陣に選ばれ、首航高科能源技術股份有限公司が自主設計・投資・建設を担当。2018年12月末に送電網に接続。総投資額は28億元。年間発電量は3億9000万キロワット時で、年間35万トンの二酸化炭素排出削減、経済効果は3億~4億元(約60億~80億円)を見込む。

首航高科は、天津、敦煌、玉門にタワー式および槽式反射鏡の生産ラインや背板プレスラインを構築。世界最先端の自動化定日鏡組立・検査ラインを採用。直径2.7キロメートルの世界最大級の溶融塩タワー式鏡場の設計・製造・制御技術を確立した。2023年には、1月から11月までの発電量が2億3500万キロワット時を記録し、前年比21%増。9月単月の発電量は3192万キロワット時、連続発電時間は338.21時間に達した。
敦煌大成聚光熱電有限公司が運営する世界初の商業化溶融塩リニアフレネル式50MW光熱発電所は、2020年6月に送電網に接続。総投資額は16億8800万元。15時間の溶融塩蓄熱システムを備え、年間設計発電量は2億1400万キロワット時。

この発電所は、溶融塩を蓄熱・伝熱介质として使用。従来のフレネル式技術の課題だった防凝エネルギー消費の大きさを克服し、連続運転を実現。核心装備の国産化率は97%以上で、直径90ミリメートルの高温真空集熱管など12の重要技術で自主知的財産権を獲得。光エネルギー変換効率は92%を超え、12万面の鏡の角度をリアルタイムで監視するスマートクラウドプラットフォームで高効率運用を実現。2022年に甘粛省科学技術進歩賞一等賞を受賞し、グローバルな溶融塩リニアフレネル式光熱発電の商業化の空白を埋めた。

これらの光熱発電所から生み出される電力は、「西電東送」ルートを通じて北京などへ送られる。甘粛省は中国の電力大国となり、歴史文化都市の敦煌は太陽光発電の最大拠点の一つとなった。光熱発電は、蓄熱システムにより夜間や曇天でも安定した電力供給が可能。風力や光伏発電の不安定さを補完し、クリーンエネルギーの大容量・長周期蓄電の課題解決に寄与する。

敦煌の光熱発電所は、技術革新と環境保護の象徴だ。規模の経済性、技術向上、効率的な運用管理により、発電コストの低減が進む。首航高科は現在、400MWの光熱発電プロジェクトを進行中で、総額58.7億元の契約を獲得。国際市場でも、ボツワナでの200MWプロジェクトなど海外展開を加速。甘粛省のゴビ砂漠に輝く「スーパーミラー発電所」は、クリーンエネルギー社会の構築に向けた大きな一歩となる。
(文:徐静波)
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【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。
講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。
日本記者クラブ会員。
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