中国税務当局が、海外での株式取引による所得に対する個人所得税の申告を強化している。『金融時報』の報道によると、最近、一部の納税者が税務部門から通知を受け、海外所得の申告とそれに伴う税金の納付を求められている。税務当局は、国際的な金融口座情報の自動交換制度(CRS)を活用し、海外所得の申告漏れを厳しく監視している。
中国の個人所得税法では、株式取引による所得は「財産譲渡所得」に分類され、20%の税率で取引ごとに課税される。国内の二级市場(証券取引所)での株式取引所得は現在、個人所得税が免除されているが、海外での直接的な株式取引所得には免税措置がなく、所得を得た翌年に申告・納税が必要だ。吉林財経大学の張巍教授は、「米国、ドイツ、豪州など主要経済国や多くの発展途上国でも、海外株式取引所得への課税は一般的な慣行」と説明する。
ただし、株式取引は頻度が高く、損益が混在する場合が多い。納税者からは「取引ごとの課税で損失が控除できない場合、税負担が重くなる」「計算が複雑だ」といった声が上がっている。これに対し、中国税務当局は、納税年度内での損益通算を認めているが、年度をまたいでの損失繰越は認めていない。この仕組みにより、納税者の負担軽減と計算の簡素化が図られている。

中国は、経済協力開発機構(OECD)が推進するCRS(共通報告基準)に参加しており、海外金融口座の情報を自動的に取得している。税務当局は、CRSを通じて得たデータを個人所得税の申告情報と照合し、申告漏れや過少申告を高精度で発見する体制を整えている。この仕組みにより、海外での株式取引所得の申告漏れが可視化され、税務コンプライアンスの向上が図られている。
今年3月末、湖北、山東、上海、浙江などの税務部門が、海外所得の未申告に関するリスク対応事例を公表した。山東省のケースでは、税務当局が税務ビッグデータを活用し、国内居住者の張氏が海外所得を申告せず納税していない疑いを検知。税務当局は「五段階作業法」を用いてリスクを通知し、是正を促した。調査の結果、張氏は海外所得の未申告が確認され、税務当局の指導のもと、税金と遅延金合わせて126.38万元(約2700万円)を自主的に納付した。
中国税務当局の海外所得課税強化は、グローバル化に伴う資産移動の透明性を高める動きの一環だ。CRSの導入以降、海外金融口座の情報収集が進み、税務当局の監視能力が飛躍的に向上している。一方で、納税者からは、複雑な申告手続きや損益計算の負担を懸念する声も上がっている。専門家は、税務当局が今後、納税者向けのガイドラインを充実させ、申告プロセスの簡素化を進める必要があると指摘する。 この動きは、中国人投資家の海外資産運用にも影響を与える可能性がある。特に、海外株式市場への投資が活発な中、申告漏れリスクに対する意識向上が求められる。税務当局は、CRSデータを活用した監視をさらに強化し、適正な納税を促す方針だ。
(中国経済新聞)