映画「醤園弄・懸案」上映率急落、章子怡の主演も投資赤字を救えず

2025/07/22 12:30

6月下旬に正式公開されて以来、中国の著名な監督チェン・カーシン(陳可辛)が手がけ、チャン・ツィイー(章子怡)が主演を務める映画「醤園弄・懸案」((She’s Got No Name)は、興行収入と評判の両方で大きな失敗を喫した。夏の映画シーズンの注目作として期待されていたこの作品は、観客を最も失望させた映画の一つとなってしまった。

チャン・ツィイー、レイ・ジャーイン(雷佳音)、ヤン・ミー(楊冪)、チャオ・リーイン(趙麗穎)といったトップスターが揃う「史上最高のキャスト」を誇るこの映画は、公開初週から評判の逆風に直面した。豆瓣(中国版IMDb)での初週の評価はわずか5.9点(現在は5.7点)で、チェン・カーシン監督のキャリア最低記録を更新した。

公開から1か月で「醤園弄・懸案」の累計興行収入はわずか3.75億元(約74億円)に留まり、製作側の投資回収ラインを大きく下回っている。2024年、製作会社である歓喜伝媒(Happy Media)は、映画「紅毯先生」(The Movie Emperor)の興行不振により業績が黒字から赤字に転落していたが、今回の名監督への賭けの失敗により、さらなる業績悪化の危機に瀕している。

6月中旬、「醤園弄・懸案」は第27回上海国際映画祭のオープニング作品として華々しくデビューした。歓喜伝媒が主投資・主導したこの犯罪サスペンス映画は、年間で最も期待される中国映画の一つとされていた。

本作は、1945年に上海を震撼させた「醤園弄殺夫事件」を原案にしている。宣伝段階では、サスペンス推理と女性の力という二つのセールスポイントを強調し、チャン・ツィイーやレイ・ジャーイン、ヤン・ミーといった人気スターの「圧倒的キャスト」がメディアで大きく取り上げられた。

しかし、各プラットフォームでの観客のコメントを見ると、「スターのスライドショー」「ストーリーがバラバラ」「詐欺的マーケティング」といった批判的な言葉が目立つ。豆瓣で最も「いいね」を集めた短評は次のように書いている:「まるで1000発の爆竹がバチバチと鳴り響いて終わったような映画。もう全スターキャストの映画は作らなくていい。みんなが大げさでわざとらしい演技で神がかったシーンを作ろうとしている。」

「醤園弄・懸案」の興行と評判の失敗は、製作会社である歓喜伝媒が近年経験している一連のプロジェクト失敗の縮図に過ぎない。2024年の財務報告書では、同社は「醤園弄・懸案」を業績改善の鍵となるプロジェクトと位置付けていたが、現状ではこの映画で2024年の赤字を解消することはおろか、さらなる財務負担を背負う可能性が高い。

歓喜伝媒は2015年に、アリババ・ピクチャーズの元会長ドン・ピン(董平)と、著名な映画監督ニン・ハオ(寧浩)、シュー・ジェン(徐崢)、シャン・シャオカン(項紹琨)によって設立され、「21ホールディングス」の借殻上場を通じて香港証券取引所に上場した。

歓喜伝媒は、独自の「監督パートナー制度」により業界で独特な地位を築いた。この制度では、チェン・カーシン、ウォン・カーウァイ(王家衛)、チャン・イーモウ(張芸謀)、クー・チャンウェイ(顧長衛)、チャン・イーバイ(張一白)といった一流監督と契約を結び、株式を配分することで深い結びつきを構築し、「名監督クラブ」とも称される体制を作り上げた。

このモデルは、歓喜伝媒に大きな先行者利益をもたらした。監督の個人ブランドと創作能力に支えられ、設立初期から高品質なプロジェクトを迅速に確保し、競争の激しい映画市場で足場を固めた。2018年にはニン・ハオ監督の「我不是薬神」が31億元(約610億円)の興行収入を記録し、年間の現象級映画となった。2019年の春節シーズンには、同じくニン・ハオの「瘋狂的外星人」が22億元(約430億円)を稼ぎ、2023年にはチャン・イーモウの「満江紅」が45.44億元(約900億円)で年間興行収入のトップに輝いた。

しかし、近年、映画市場の不確実性は名監督の存在によっても軽減されない。最も成功した監督であっても、すべての作品がヒットする保証はない。このような背景で、歓喜伝媒の監督パートナー制度の限界も明らかになってきた。

(中国経済新聞)