京東が自社開発の無人軽トラックを発表

2025/07/12 17:00

中国のEコマース大手、京東(JD.com)がこのほど、自動運転技術を搭載した自社開発の無人軽トラック「京東物流VAN」を発表し、物流業界に大きな話題を呼んでいる。この車両は単なる新製品にとどまらず、京東が自動運転物流の分野で掲げる野心的なビジョンを象徴する一手と言える。
「京東物流VAN」は、物流業界における無人軽トラックの新たな基準を打ち立てる存在だ。この車両は、以下の先進的な仕様を誇る:
1、容量の貨物スペース:24立方メートルの超大型貨物スペースを備え、従来の4.2メートル貨物トラック(18~20立方メートル)に比べ、約30%多くの荷物を運搬可能。これは現行の物流業界で最大の積載量を誇る無人軽トラックだ。
2、高い自動運転性能:L4レベルの自動運転技術を搭載し、3基のライダー、20基のカメラ、12基のミリ波レーダーを組み合わせたセンサー構成により、360度無盲点の環境認識を実現。検知範囲は従来比で19倍、感知性能は3倍向上している。複雑な都市交通環境でも、最適なルートを自律的に計画し、障害物を正確に回避する能力を備える。
3、長距離走行能力:比亚迪(BYD)製の専用線控シャシーを採用し、最大積載量1トンで160キロメートルの航続距離を実現。電動駆動システムにより、従来の化石燃料依存を90%以上削減し、CO2排出量を大幅に低減する。
4、高い安全性と信頼性:車両は完全冗長設計を採用し、ブレーキ、ステアリング、通信、電源などの多重バックアップにより、システムの単一障害を排除。車載規格に準拠した線控システムは、L4レベルの自動運転に必要な高い安全性を確保する。
これらの仕様により、「京東物流VAN」は、Eコマース倉庫、宅配仕分け、製造業のサプライチェーン、冷链輸送など、高頻度の物流シーンで圧倒的な効率を発揮する。
「京東物流VAN」が主に担うのは、物流業界で「短駁(短距離輸送)」と呼ばれる業務だ。これは、集散センターから地域の前置倉庫へ荷物を運んだり、倉庫から配送ターミナルへ大型荷物を移動させたりする中間輸送の役割を指す。従来、この業務は人手による運転に依存していたが、京东はこれを自動運転技術で置き換えることで、物流の効率化とコスト削減を目指す。
実証データによると、「京東物流VAN」は従来の輸送方式に比べ、約60%の運用コストを削減可能だ。このコスト削減は、人的費用の排除、電気代と燃料代の差額、そして24時間稼働による高い配送効率によって実現されている。さらに、荷物積載効率は40%向上し、1回の輸送で標準的な物流ボックスを従来の3台分の貨物トラックに相当する量を運べる点も強みだ。
また、車両は京東の「スマートブレイン」システムと連動し、注文、運力、経路をリアルタイムで最適化。運力配分の応答速度は分単位にまで短縮され、都市交通の混雑緩和にも貢献する。
現在、「京東物流VAN」は北京、広州を含む30都市で試運用を開始している。これらの都市では、倉庫から配送までをカバーする全物流チェーンのシーンでテストが行われており、良好な結果が報告されている。京東は、2026年までに1,000台以上の車両を本格展開する計画を掲げ、スマートスケジューリングシステムを活用して単体車両の運用コストをさらに低減する方針だ。
この展開は、京東がすでに全国30都市で500台以上の無人配送車を運用し、200万キロメートルの走行データを蓄積してきた実績に支えられている。これらのデータは、L4レベルの自動運転技術の改良や、他の自動運転分野(例えば自動運転タクシー)への応用にも役立つと見られている。

(中国経済新聞)