世界最大の動力電池メーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)は、電池製造の枠を超えた新規事業への投資を活発化させている。6月23日には、自動運転およびロボティクス分野における複数の重要な投資案件が相次いで発表された。
同日、寧徳時代は、配車プラットフォームの哈囉出行(Hello Chuxing)およびアント・グループとともに、「上海造父智能科技有限公司」を共同設立した。同社の登録資本金は12.88億元(約261億円)で、L4レベルの自動運転技術の研究開発、安全性確保および商業化の推進に特化するとしている。
寧徳時代は今回の提携について、「スマートドライビング、新エネルギー出行の統合サービスプラットフォーム構築、新エネルギー電池のアフターサービス体系の整備をはじめ、複数の重点領域において深い協力関係を築き、商用展開を推進する」とコメントしている。

さらに同日、北京銀河通用ロボット有限公司(以下、銀河通用)は、寧徳時代が主導する新たな11億元(約223億円)の資金調達を完了したと発表。2023年に設立された同社は、わずか2年で累計24億元(約486億円)以上を調達しており、世界初のヒューマノイド型知能小売ソリューションを発表。輪式双腕ロボット「Galbot」は、50平方メートル規模の無人店舗において、約5000種の商品に対し、棚卸し、補充、ピッキング、梱包といった全自動処理を行える。
このほか、2024年2月には寧徳時代と百度(バイドゥ)が戦略協定を締結。両社はAIおよび自動運転を中心とした「数智化」領域で連携し、工業用途でのAI活用と無人出行サービスの普及促進を進める方針を明らかにしている。
寧徳時代は、動力電池、バッテリー交換製品およびサービス、スケートボードシャシー技術など、同社の強みを生かした無人車開発分野での活用を視野に、バイドゥとの協業を深化させる構えだ。

このように、わずか数ヶ月の間に相次ぐ“非電池”領域への積極的な投資は、寧徳時代の明確な戦略意図を示していると見られている。2024年、同社の世界市場シェアは37%に達し、業界トップの地位を維持しているものの、近年は競争の激化や技術革新の鈍化が課題となっている。
同社の曾毓群(ツェン・ユーチュン)董事長兼CEOは、香港上場時の発言で「寧徳時代は単なる電池部品メーカーではなく、システムソリューションプロバイダーである」と述べており、事業の多角化を鮮明にしている。

業界関係者の間では、同社の投資戦略は「産業シナジー」に重きを置いたものであり、単なる財務的リターンを超えた構造的成長を追求しているとの見方が強い。縦の統合により主力事業である電池分野の競争力を高めるとともに、横の連携によって新たな成長領域を切り開く戦略は、“製品主導”から“エコシステム構築”へと進化を遂げており、産業サイクルのリスク分散と持続的競争優位の構築に寄与している。
(中国経済新聞)