ファーウェイ、「天才少年のAI挑戦課題」を発表 最先端技術の研究へ世界の英知を結集

2025/06/19 07:30

ファーウェイは6月16日、公式Wechatで、世界の若きエリートたちを相手に積極的に応募するよう求める「天才少年の挑戦課題」というメッセージを発表した。課題とは、スマートコネクテッド&コンピューティング、基礎研究・イノベーション、スマート端末、クラウドコンピューティング、スマートカーという先端5項目および将来有望な分野を対象としたものである。

このうちスマートコネクテッド&コンピューティングの課題は、自社のワイヤレス通信の仕組みと基幹技術の研究を指し、通信需要の拡大や多様化に対応すべく、より高機能でスピーディーな通信技術の構築に努める。システム学習や基幹技術の研究の強化を狙うアセンド(昇騰)は、技術の学習強化を深く探索して性能のさらなる向上を狙う。AIクラスター光交換ネットワークの研究は、AIクラスターのデータ送信速度や効率アップを主眼とし、大規模なAIコンピューティングをしっかりしたネットワークで支える。またAI Nativeシステムのソフトウェア構成・技術研究は、AIのプロトタイプのソフトウェア構成を築くことが狙いであり、AIの性能を十分に生かす。さらにAIエージェントの技術研究は、特に高機能で意思決定力の強いAIエージェントを作り上げることが狙いである。

創業者でCEOである任正非氏

基礎研究・イノベーションの課題も同じく注目されている。大規模言語モデル(LLM)の安全に関わる技術の研究は、LLMの利用に際し発生しているリスクを念頭に、着実で有効な対応策を探り、安定かつ安全にLLMを稼働させるためのものである。画像生成/編集技術の研究は、画像や映像の編集技術の進展を求めるもので、より鮮やかなビジュアル感覚を醸し出すことが狙いである。トレーニングクラスターの仕組みのデザインと改良は、トレーニングクラスターの仕組みを入念にデザインし改良を続けることで、モデルトレーニングの効率や質量を向上させる。分散LLMの仕組みとトレーニングアルゴリズムの研究は、さらにスピーディーな分散LLMの仕組みやトレーニングアルゴリズムを開発するもので、モデルトレーニングの費用を軽減する。さらにAIのOSへの統合という研究は、エンド側のAIとOSの融合や新たな活用を探査する。

スマート端末の課題は、グローバルモデル(物理的法則)の理論の進展であり、より高度で気配りのあるサービスを施すべく、現実の世界の物理的法則を端末側によりよく理解させ、シミュレーションすることが期待される。エージェントやOS向けのカスタマイズや記憶力向上は、スマート端末のカスタマイズ設定やユーザー記憶の向上が狙いである。コンピュータービジュアル、マルチモードの理解や生成をベースにしたマルチメディアアルゴリズムの研究は、コンピュータービジュアルなどの利用でマルチメディアアルゴリズムの新たな進展を目指す。AIおよびスマートシステムの基幹技術の研究は、AIやスマートシステムの基幹技術における問題に取り組むものである。端末用高効率減感広帯域増幅器の仕組みと線形化研究は、端末用増幅器の効率を上げて電波の送信を向上させる。

クラウドコンピューティングについては、広く一般利用が可能な身体性AIの操作技術の研究であり、クラウド側にAIで機器を制御する力を与えて、クラウドコンピューティングの利用範囲を開拓しようとするものである。デジタルプロト基幹技術の研究は、デジタルプロトの時代のコア技術を探査する。メディアAI基幹技術の研究は、メディアでのAIの活用を目指し、存在する基幹技術の問題を解決する。AIベースの次世代クラウドネットワークインフラ研究は、AIを使ってより先進的なクラウドネットワークインフラを築く。CloudDevice側クラウドAIモデルの連携研究は、端末とクラウドのAIモデルの強い連携を目指すものである。

スマートカーについては、end-to-end /マルチモードでLLMのトレーニングの科学や推論を最高級にするもので、スマートカーにおけるLLMのトレーニングや推理の改良にスポットをあてる。自動運転VLAモデルは、より先進的な自動運転モデルの研究開発である。スマートシートのAgentの統合および複雑計画は、シートにある各エージェントの統合や複雑なタスクの実行を狙う。車のシャーシの統合制御技術は、シャーシの統合制御レベルを引き上げ、走行時の安全性や乗り心地を確保する。自動運転マルチモードセンサーのモデリングおよびニューアーキテクチャーは、自動運転マルチモードセンサーのモデリング法と新たな仕組みを探査する。

ファーウェイは2019年に、世界からエリート人材を募集するために「天才少年」計画を打ち出した。去年の募集要項には世界中から集めると明記されており、学校、専攻、学歴は不問で、理数系、コンピューター、AIなどで実績を持ち、業界の技術リーダーになりたいという意志があればだれでも応募可能としている。

ファーウェイはかねてから研究開発や人材の整備を重視しており、研究開発費については2024年が売上高のおよそ20.8%となる1797億元で、最近10年間の合計額は1兆2490億元以上となっている。創業者でCEOである任正非氏はこれまで、「一見『無用』に見える科学への投資を増やし、基礎理論の研究を重視しなければいけない」と繰り返し強調している。また「今の時代は科学と技術の境目があいまいになっており、科学が技術に変わる時間も随分と短くなっている。企業は大学の理論研究が完成してから技術開発をするようではいけない。主体的に基礎研究に取り組むべきだ」と指摘している。ファーウェイは基礎理論の研究に年間30億-50億ドルを費やしており、未知の分野の探査へ大学と緊密に連携している。今回発表された「天才少年の挑戦課題」で示された基礎研究・イノベーション分野の課題は、まさにこうした信念を十分に体現したものである。

ファーウェイの「天才少年」の年俸は3段階に分かれており、第1段階は89万6000元~100万8000元(約1805万円~2030万円)、第2段階は140万5000元~156万5000元(約3435万円~3153万円)、第3段階は182万元~201万元(約3666万円~4050万円)となっている。これまでの最高年俸は201万元(約4050万円)だった。

(中国経済新聞)