米国向け輸出に壁、上海で「外販転内販」商品の販売拡大

2025/05/6 07:30

上海・南京路歩行街に位置する老舗食品店「第一食品商店」では、近ごろひときわ注目を集める特設コーナーが登場している。そこに並ぶのは、もともと米国向けに輸出される予定だった高品質な商品。現在は「外販転内販」、つまり輸出から国内販売へと切り替えられた商品群として、多くの市民に支持されている。
コーナーの主役は外貿企業「思楽得(スィーレード)」の製品で、約30種類のキッチン用品や生活雑貨が揃う。同社の国内マーケティング部責任者・曹爽氏は、「当社は外販を中心とする老舗企業で、米国市場の売上比率は全体の50~60%を占めていました。しかし、トランプ政権による関税強化の影響で、米国への輸出が困難となりました」と語る。
例えば、ドイツブランド向けにOEM生産していたというステンレス製のフレンチプレスコーヒーポットは、本来ならば欧米の高級ホテルで使用されるレベルの製品。真空断熱構造による保温・保冷機能、分解洗浄のしやすさ、断熱蓋付きなど、国際水準の品質を誇る製品だ。海外では1800元(約3万8000円相当)で販売されていたものが、現在この店では219元(約4500円)で購入できる。
思楽得は、販売状況を踏まえて今後の商品構成を見直し、受賞歴のある人気商品や新製品の国内展開を強化する方針だという。


また、第一食品商店・南東店の梁龍俊店長によると、同店は他の外貿企業とも積極的に連携を進めており、5月の連休明けには日用品や食品など「輸出品質」の新商品が続々と入荷予定である。
この動きに呼応するように、「五一(メーデー)」連休中は多くの上海市民が店舗を訪れた。テレビや新聞などで関税障壁の影響により輸出が難しくなっていることを知った市民が、『高品質の商品を安く買える』『中国企業を応援できる』という“ダブルメリット”を感じて来店しているという。
そのうちの一人、退職後の余暇を楽しむ于さん(女性)は、「ニュースを見て、ぜひ国産を買って応援したいと思いました。今日はカップを買って、その後は靴も見てみます」と笑顔で語った。
関税の壁が一部の外貿企業に打撃を与える一方で、その高品質な商品が国内消費者に新たな魅力として届けられている。「輸出仕様」が「国産応援」へと転換される今、中国内需市場の可能性が改めて注目されている。

(中国経済新聞)