AVICが上場廃止予定 孫会社の中航信托は「迂回上場」が終末

2025/04/18 11:30

中国のインダストリー・ファイナンス・ホールディングス(中航産融=AVIC)は、株主総会での審議の結果、上場廃止が決定した。これを受け、「迂回上場」していた孫会社の中航信託も同じく上場を廃止することになる。

AVICは4月14日、2025年2回目の臨時株主総会で上場廃止に関する審議を行い、上海証券取引所に廃止を申請することになったと発表した。現金選択権の行使の申告の段階に入り、持ち株会社である中航工業が中航工業とその子会社を除くすべてのA株上場の出資元各社に対し、3.54元/株で現金選択権を付与する。この選択権の申告期間は2025年4月23日から4月25日という。

AVICはこれについて、経営状態が極めて不安定になり深刻な影響が生じる恐れがあることを理由に挙げた。業績予想によると、2024年度の親会社帰属の利益は-4800万元前後で、営業外損益を除いた最終利益は-1.89億元という。

AVIC 本社ビル

AVICによると、2024年は事業構造の改革により売上高や手数料、コミッションの収入が減ったほか、経済情勢などの影響で市場全体の資産額が落ち込み、自社所有分の帳簿価額が下がるなど、予想外の出来事が重なったという。

AVICは中国航空工業集団の産業投資、総合金融法人で、2012年8月に上海で上場しており、傘下に中航証券、中航信託、中航期貨などの金融機関を有している。株式構成について、AVICが中航控株の株式73.56%を保有、中航控株が中航信託の株式84.42%を保有していることから、AVICは事実上、中航信託の株式の62.10%分を保有していることになる。

「迂回上場」していた信託会社が上場を廃止した例を挙げてみる。

2023年9月15日、経緯紡機が臨時の株主総会で上場廃止に関する議案を成立させ、10月24日にこれに関する届け出書類が深セン証券取引所に提出されたと発表された。深セン証取の上場審議委員会での審議も終わり、関連規定並びに審議委員会の意見に基づき経緯紡機の上場廃止が決定し、数日後に正式に上場廃止となった。経緯紡機は中融信託に対し、2010年に中植企業集団所有分の1.17億株を譲り受けたことで筆頭株主となっていた。中融信託への株式保有率は現在、経緯紡機が37.47%、中植企業が32.986%となっている。

さらに2024年10月、同じく上場会社である電投産融が「経営再建案・株式再上場の開示に関する公告」として、株式の発行により国電投核能(電投核能)の経営権を取得し、さらに国家電投集団資本控股(資本控股)の経営権を移転した上、状況を見て資金の調達を行うなどといった大掛かりな資産立て直し計画を発表した。資産の移転先は投資持ち株型の会社で、電投経紀、百瑞信託、先融期貨などの上場金融機関を通じて保険の取り扱いや信託、先物といった金融商品やサービスを提供する。百瑞信託もこの再建により「迂回上場」を果たすことになる。

信託会社はこのところ、情報開示の不備や、主な収益モデルが不明確との理由で、単独でのIPO実現が難しくなっている。現時点で、自力で上場を果たしたのは陝国投信託、建元信託(旧安信信託)、山東信託の3社のみで、江蘇信託、昆侖信託、五鉱信託、浙金信託などおよそ10社が迂回上場となっている。

これについて、信託業界に詳しい関係者は、「信託会社が迂回上場という策を選んでいたのは、融資元の拡大や融資コストの削減、資本面の縛りの緩和につながる上、構造改革の最中である場合は安全性の向上やブランド形成に役立つからだ」と述べている。

またこの関係者は、これら信託会社の「迂回上場」の廃止例について、「理由はまちまちで、国有大手による『金融業粛清』に関わるケースや、親会社の事業統合に関わるケースもある」と述べた。信託会社のほとんどは親会社が国有大手であり、これまでの「迂回上場」は、業界の粛清が進む中で親会社の全体的な処置に沿って「無理な形」を講じられたにすぎないものと見ている。

(中国経済新聞)