中国、再利用可能ロケットの実用化へ大きく進展

2024/09/14 07:30

中国の民間ロケット会社「藍箭航天」が自社開発した試験ロケット「朱雀3号VTVL-1」が9月11日、甘粛省酒泉の衛星発射センターで10km級の垂直離着陸往復飛行試験を行った。運搬ロケットの重複利用技術における新たな進展となるものである。中国初となるステンレス鋼液体ロケットで、2025年に初飛行を予定しており、成功すれば大積載力で低コスト、高周波数での打ち上げに向けて重要な一歩となる。

北京に本社がある藍箭航天は、2020年に12億元(約240億円)のC+ラウンド融資を得ており、中国の民間運搬ロケット開発企業として初めて完全に参入資格を取得し、自社の液体エンジンでの軌道乗せを果たしている。

衛星の周波数や軌道資源をめぐって、このところ世界各国が競争を演じている。中国通信院の「6G全体ビジョンと潜在主要技術白書」によると、軌道高さ300km-600kmの衛星は寿命、通信遅延、周波数問題といった面でメリットが大きく、各国間で通信衛星コンステレーションの実行における主な対象として競争が演じられている。アメリカのSpaceXが「スターリンク」を打ち出してから、各国が相次ぎ同様の計画を発表しており、中国も同じように低軌道衛星を取り組みの中心としている。こうした衛星は軌道での利用可能数およそ10万台とみられ、2029年には実用台数が5.7万台に達する見込みで、競争がさらに激しくなりそうである。

国連の「無線通信規則」によると、衛星の軌道や周波数は「届け出順に利用」との原則があり、許可を取得してから7年以内にコンステレーションで衛星を100%そろえないと当該周波数を利用することができない。中国はすでに国連の国際電気通信連合(ITU)に対し、複数のコンステレーションで「GW星座」や「G60スターリンク」など合わせて約4万台の衛星を届け出ており、このうちG60だけで年間2000台近くを打ち上げなくてはならない。

「中国航天科技活動白書(2023年)」によると、中国航天は2023年に67回の衛星打ち上げを実施し、このうち民間企業の衛星は2022年の5回から13回に増えた。こうした数字から、中国は今、打ち上げ体制が極めて不十分である中で回数が多く、難易度も高いことが分かる。逆に言えばビジネスチャンスは十分にある。

今年の政府活動報告で、初めて宇宙ビジネスが「新たな成長のエンジン」として盛り込まれており、北京、上海、海南省などが相次ぎ参入計画を発表している。中商産業研究院によると、中国は2024年に宇宙ビジネスの市場規模が2.3兆元(約46兆円)となり、年間平均成長率は23.3%となるという。

(中国経済新聞)