中国で、スポーツウェアのブランド「Champion」への人気が下火になっている。先ごろ、Championの運営元で下着やスポーツカジュアルウェアを製造しているアメリカのHanesBrands(HBI)が、Championをブランド管理会社Authentic Brands Group, Inc.(ABG)におよそ12億ドル(約1889億円)で売却すると発表した。HBIはこの売却額について、Championが何らかの業績指標を達成すれば別途現金加算で計15億ドル(約2361億円)となる見込みもあるとしている。
Championは一時期、中国でも大変流行していた。香港の永嘉集団により中国本土に導入され、2015年には通販ショップのTmallが公式海外フラグシップ店を開設しオンライン販売を始めた。永嘉の傘下にある皆柏が中国本土唯一のChampion販売店となり,オンラインと店舗で営業をし、運営権は地域の市場代理店に委ねた。Championは中国で流行に乗り、マイナーブランドからたちまちメジャーブランドに変わった。
2018年には北京の太古里にChampionのはフラグシップ店がオープンし、買い物客が列を作った。皆柏はその後、上海、広東省深セン、四川省成都などでも店を設け、この年はファッション通販サイト・Lystの「人気LOGO」ランキングでChampion はSupremeに次ぐ2位に入った。
HBIはこの成功を受け、代理店を増やすことを決定した。そこで2019年6月、中国婦人靴販売大手の「百麗国際」が、数百の小売店およびTmall、京東など通販のフラグシップ店を運営することでChampionと合意したと発表した。ところが、代理店によって経営スタイルが違うことで値段やイメージに食い違いが生じて、消費者の間から「Championは最近値段の上げ下げが大きくしばしば安売りをしている」との声が漏れた。
ブランド管理の専門家である程偉雄氏は、「安売りは運営の問題の表れであり、在庫が増えすぎた故の大幅割引だ」と見た。販売店2社が競争した挙句、永嘉の方が撤退してしまい、2023年10月には総額1.04億元(約22.6億円)でChampionの中国事業を売却すると発表した。永嘉によると、Championは中国での販売権が独占でなく、関係のないネットショップが運営したので、他の販売店との競争で劣勢に立たされたという。データによると、永嘉は中国のChampion事業で、2022年は5200万香港ドル(約10.5億円)、2023年上半期は3400万香港ドル(約6.85億円)の赤字を計上した。
この結果、販売権分裂という事態もなくなり、単独での経営権を手に入れた「百麗」は、人気少年アイドルグループ「TFBOYS」のリーダー、ワン・ジュンカイをイメージキャラクターに起用するなど、新たな取り組みを始めた。
程氏は、ブランドやチャネル、管理を一本化すると現地で運営がしやすくなると言う一方で、中国ではスポーツウェアのブームは去ったとも指摘した。「FILAを除けば、脚光を浴びてから専門分野特化に戻ったスポーツブランドは出ていない。今はアウトドアブームであり、スタイル系のスポーツはもうすたれている」とのことである。
(中国経済新聞)