「全人代」特別報道②新しいトレンドワード「新たな質の生産力」

2024/04/4 11:00

「新たな質の生産力」は、中国の経済界と産業界で広く注目される新しい「トレンドワード」で、ますます多くの人に知られるようになっている。全人代の政府活動報告で、2024年の政府活動任務における最初の項目として、現代化産業体系の構築を大いに推し進め、新たな質の生産力の発展を加速させることが打ち出された。

習総書記が初めてこのワードに言及

 習近平総書記は2023年9月に黒竜江省を視察した際、「科学技術革新の資源を統合し、戦略的新興産業と未来産業の発展をリードし、新たな質の生産力を加速度的に形成する」と、初めてこのワードに言及した。

 また、中共中央政治局は今年1月31日午後、質の高い発展の着実な推進について第11回集団学習を行った。

 習近平総書記は集団学習を主宰し、「質の高い発展が新時代の絶対優先事項であることを胸に刻み、新たな発展理念を全面的に貫徹し、現代的経済システムの構築を加速し、高水準の科学技術の自立自強を推進し、新たな発展構造の構築を加速し、深いレベルの改革と高水準の開放を統合的に推進し、質の高い発展と高水準の安全保障を統合的に推進する任務を確実に実行し、質の高い発展を後押しする審査・評価システムを整備して、質の高い発展を後押しするための強固な基礎を固めなければならない。新たな質の生産力の発展は、質の高い発展を後押しするうえでの内在的要請であり、重点である。引き続きイノベーションという重要な取り組みをしっかりと成し遂げ、新たな質の生産力の加速的発展を後押ししなければならない」と強調。

 「質の高い発展は、新たな生産力理論によって指導される必要がある。新たな質の生産力はすでに実践の中で形成され、質の高い発展を力強く推進する力、支える力となっている。我々はこれを理論的に総括し、概括することによって、新たな発展の実践を指導する必要がある。概括すると、新たな質の生産力とは、イノベーションが主導的役割を果たし、従来型の経済成長方式と生産力発展アプローチから脱却し、ハイテク、高効率、高い質という特徴を持ち、新たな発展理念に合致した先進的な生産力である。それは技術の革命的ブレイクスルー、生産要素の革新的配置、産業の深いモデル転換と高度化によって生まれ、労働者、労働手段、労働対象及びその最適な組み合わせによる躍進を基本的内包とし、全要素生産性の大幅な向上を核心的指標としており、その特徴はイノベーションであり、その鍵は優れた質にあり、その本質は先進的な生産力である」と指摘した。

 習総書記はさらに、「科学技術革新は新たな産業、モデル、原動力を生み出すことができ、新たな質の生産力の発展における核心的要素だ。科学技術革新、特に独創的で革命的な科学技術革新を強化し、高水準の科学技術の自立自強の実現を加速し、主要技術及びコア技術の難関攻略を成し遂げ、独創的で革命的な科学技術革新の成果を数多く生み出し、新たな質の生産力の新たな原動力を育成しなければならない」と指摘。

 新たな質の生産力とは、イノベーションが主導的役割を果たし、従来型の経済成長方式と生産力発展アプローチから脱却し、ハイテク、高効率、高い質という特徴を持ち、新たな発展理念に合致した先進的な生産力である。

 簡単に言えば、新たな質の生産力は、従来の生産力とは異なる新型の生産力で、イノベーションを特徴とし、高品質をキーポイントとした先進的な生産力のことを指す。

例えば、現在流行している人工知能(AI)や自動運転技術は、私たちの生産や生活の方式を覆す可能性があり、従来の技術形式とは全く異なる新たな質の生産力であり、これまでとは異なる発展や変遷をもたらすことが見込まれる。

「新たな質の生産力」とは何か?

 いかにして新たな質の生産力を発展させるか?

今年の政府活動報告で、以下のような主要措置が打ち出された。

 ▽製造業の重点産業チェーンの質の高い発展行動を実施

 ▽国家新型工業化モデル区を設立

 ▽国際的影響力のある「メイド・イン・チャイナ」ブランドを構築

 ▽インテリジェント・コネクテッド新エネルギー車などの産業における競争優位性を強化・拡大

 ▽量子技術やライフサイエンスなど新たな競争分野を開拓

 ▽「AI+」行動を展開

 ▽国規模の計算資源システムの整備を加速

 現在、中国経済は、すでに急速な成長の段階から質の高い発展の段階へと移行し、発展方式も要素投入主導型からイノベーション主導型へと転換している。「新たな質の生産力の発展加速」に牽引され、中国経済はイノベーションをエンジンとし、発展の質の高度化を目指している。

 実践から見ると、新たな質の生産力はここ数年、中国各地で加速度的に発展している。

 深センは世界的に重要な影響力を持つ産業科学技術イノベーション中心地だ。今や深センの通信基地局の生産量は世界の半分、生命情報・サポート医療機器の生産量は世界の2割、コンシューマードローンの生産量は世界の7割を占めている。世界のスマートフォン7台中1台は深セン製だ。

 安徽省合肥市には有名な「量子大通り」があり、世界初の量子科学実験衛星「墨子号」と世界初の光量子コンピューターが誕生した。同市はこの3、4年でさらに航空・宇宙情報産業という新たな事業を効率的に展開した。

北京市はブレイン・マシン・インターフェース産業に全面的に取り組み、上海市はメタバース重要技術のブレイクスルーに注力し、成都市は世界最先端の核融合研究施設を初期的に形成した。イノベーション駆動発展戦略の持続的な深化に伴い、イノベーションはすでに中国の多くの企業の自覚的な行動になっている。

世界知的所有権機関が発表した「グローバル・イノベーション・インデックス」(GII)2023年版によると、中国は12位にランクインし、うち6つの指標で世界一になっている。

 これまでの科学技術による産業の変革と異なり、21世紀に入った科学技術イノベーションは多くの新興国・発展途上国に追い越しの貴重なチャンスをもたらした。

 「中国は先端技術を導入するイノベーションの地になりつつあると実感している」。シーメンスの肖松グローバルシニアバイスプレジデントは自身の体験を踏まえてこう話す。ロシア文化基金の公式サイトは記事で、「中国は世界の組立作業場から、世界のハイテク部品の組立工場に転換中だ」との見方を示した。

(中国経済新聞)