中国の過去のテレビドラマシリーズや映画は、日本でも正規で配信されるタイトルにおいて根強い人気を誇る作品は少なくない。そんな中、大型連休を前に発表された新作とその興行事情は興味深い。
2022年10月5日22時現在、国慶節連休中における映画の累計興行収入は12.1億元(サービス料込み、約246億円)となった。その中でも、9月30日に公開された「万里帰途」(Home Coming)は8.7億元(約177億円)の興行収入を挙げ、累計興行収入の7割近くを占め、国慶節連休中に公開された新作映画の中で興行収入と観客動員数において共に第1位となった。
饒暁志(ラオ・シャオジー)監督、張訳(ジャン・イー)、王俊凱(ワン・ジュンカイ)、殷桃(イン・タオ)主演の映画「万里帰途」は、歴史上の実話をもとにしたもので、元外交官と外交部の新人が命令を受けて、戦争が起きた海外から中国の同胞を帰国させる物語となっている。
映画の上映スケジュールによると、国慶節に公開された新作映画は7本あったが、「万里帰途」以外の作品は興行収入が伸び悩んでいる。国慶節連休中の累計興行収入が10億元(約200億円)の節目を超えた時点で、「万里帰途」の興行収入は7億元(約142億円)、残りの新作はいずれも1億元(約20億円)未満であった。中でも「捜救」(come back home)は10月3日に公開されたが、興行収入は1500万元(約3億円)に満たず、新作7作品の中で最下位となっている。
興行収入で断トツ1位となっている「万里帰途」ですら、国慶節歴代映画興行収入ランキングにおける上位作品には及ばない。
中国の映画チケット販売サイト「猫眼電影」が運営する映画興行収入分析サイト「猫眼専業版」(マオイェンジュアンイエバン)のデータによると、国慶節1日目(10月1日)の「万里帰途」の興行収入は1.85億元(約37.7億円)で、連休中1日あたりの興行収入が2億元(約40億円)を超える日はなかった。これに対し、過去3年間の国慶節興行収入上位作品は「愛しの母国」(原題:我和我的祖国)、「愛しの故郷(ふるさと)」(原題:我和我的家郷)、「1950 鋼の第7中隊」(原題:長津湖)で、初日興行収入はそれぞれ3.88億元(約79億円)、2.75億元(約56億円)、4.11億元(約837億円)となっている。
一方、市場の予想によると「万里帰途」の最終興行収入は17億元(約346億円)になると見込まれており、歴代上位の「愛しの母国」「愛しの故郷(ふるさと)」「1950 鋼の第7中隊」の最終興行収入は、それぞれ31.70億元(約646億円)、28.29億元(約576億円)、57.75億元(約1177億円)には及ばない。
業界関係者によると、現在の傾向から今年の国慶節の累計興行収入は前年同期のそれを上回ることはほぼない。また、その主な理由として、例年、国慶節に公開される映画は一般的に早くから上映スケジュールが組まれており、宣伝をする時間が十分にあるのに対し、今年はほとんどの新作映画が公開1週間ほど前に上映スケジュールが決まり、マーケティングの時間が限られていたことが考えられる。
(中国経済新聞)