中国、2026年大学入試の小論文問題が発したメッセージとは

2026/06/9 11:00

中国で6月7日、1290万人の出願者を集めて全国共通の大学入学試験がスタートした。

試験問題の中でかねてから社会の注目を集めている小論文について、今年はどのような変化か見られたか。出題の変化は、どのような「教えと学び」というメッセージを発したのだろうか。

今年の大学入試で、小論文の全国共通問題における一番の変化は、選択分野が多元化し出題の枠が広がったことである。

今回の小論文は、用意された文章について「この文についてどのような発想やアイデアが生まれたか。文章にまとめること。内容は、視点を定め、構想を決め、書き方を定め、タイトルをつけること。他人の文章の真似や書き写しはしないこと。また個人情報を開示してはならず、文字数は800字以上とする」という問題があった。

今年の問題文について出題者グループは、「時代が変わりゆく中、新たな技術革命や産業の変革が際立つようになり、ハイレベルな人材や主要な技術をめぐる国際競争も非常に激しくなっている」と説明している。「全国共通I」の「文章読解I」は「深渊を探る」という国際的な技術の最前線に焦点を当てており、雑誌「ネイチャー」で2025年度の「今年の科学者10人」に選ばれた中国科学院深海科学工程研究所の杜夢然氏(38歳)が主人公となっている。杜氏は2024年、スタッフとともに9000メートル以上の海底で化学合成生物を発見したほか、その後も繰り返し深海の調査に乗り出し、海底には世界規模で「化学合成生物群集」が存在するという仮説を発表した。

試験問題は、以下2つの文章のうちいずれかを選択する形であった。

1.杜氏が「ネイチャー」で「今年の科学者10人」に選ばれたことを切り口とし、専門分野である深海の調査をめぐって活動を展開し、女性科学者として奮闘する姿を見せたほか、深海の探査について中国が「追随」から「先頭」へ至ったニュースの背景を加えており、この分野における技術研究が一段と進展していった。

2.杜氏ら深海調査の研究者が「ネイチャー」で発表した論文「海の最も深い海溝で繁殖する化能合成生物を発見」を要約した文章。

出題者グループはこれについて、「2つの文章はともに、勇敢にアタックし前人未踏に挑むイノベーション精神や、英知を結集しメンバーで協力するという団結精神を十分に体現している。若者たちの好奇心や想像力、探求意欲を刺激し、科学者の資質を備え研究活動に打ち込みたいという若者を育てるものだ」と説明している。

出題者グループによると、2026年の入試の小論文はかなり刷新しているという。文章のテーマや書き方などについて分析や説明をさせるという従来の主観的な出題方式ではなく、複数の文章から判断や選択をさせるという客観的な出題方式とした。読書について広く興味を引き出し、視野の拡大に努め、必要な文章を読みこなした上でさらに勉強し、良い本を読んでもらうためのものである。

出題者グループはさらに、小論文の共通問題について、「分野ごとに分かれていた評価の内容を一本化し、題材を頼りに受験生の思考プロセスに沿った形で様々なレベルや方向の課題を入念に作り上げ、理解、分析、吟味、表現など様々な素養や能力の評価を一つにまとめた」と説明している。「共通I」の文章読解IIの最後の1問は「記述補足」とし、本文を読み理解した上で規定に沿って「続き」を書くよう求めている。

出題者グループによると、「こうした出題は新しいものだが、国語の学習でよくある練習方法の延長でもある」という。中学校の国語の教材でも、「裸の王様」の続き、新しい詩の続き、魯迅の小説「故郷」の続き、モーパッサンの小説「ジュール叔父さん」の続きを書かせるものがある。これらの問題は文章の読解力や表現力を一度に評価するものであり、読解と言葉・文字の活用という2つの分野の敷居を取り払い、課題の作成に一段と総合性を持たせるものである。

また今回、共通問題ではこれまで別に設けていた名作や名言の書き抜きを文章読解IVで出題し、タイトル作成を古詩読解のすぐ後に設けている。例えば「共通I」の17問目で、3つの書き抜き問題はそれぞれ、古詩の「風」のタイトルと文中のイメージに関わりがあるものとしている。

中国教育在線の編集長である陳志文氏は、「分野別や固定化状態をやめて柔軟かつオープン、脱暗記型の問題とする傾向は、今や問題作成時の中心的ガイドラインとなっている」と言う。今年の小論文は解答と評価が一段とオープンな形となっており、主観的問題で模範解答がないものも多い。また一方で採点基準もおおらかになっており、「例えばある問題で、出題者は3つを正答すれば点を与えるしているが、実際には2つが答えられれば満点となる」、「やみくもな棒暗記で高得点をとる時代は過ぎ去り、小論文については本当に読書を重ねて思考力を鍛えることが要で基礎となる」と陳氏は述べている。

出題者グループは今年の小論文について、「論理やアイデアの成長を促し、基本的な言葉や文学の現象を見分け、分析し、比較し、まとめて総括する。かつ自分の見解をきっぱりと表現し、発見したものを記述させている」としている。

「共通I」の文章読解IIIを例にとると、14問目で「文章4は、文章1にある『西門豹、鄴を治むるや、民欺かず』を裏付けるものか。またその理由を説明すること」と出題している。この問題は受験生の論理や思考力、批判的な考え方を評価することが主眼であり、自らの見解を主張するよう求めている。受験生は文章の中身を十分に理解した上で総合的に分析や判断をし、結論と理由のつじつまを合わせなくてはいけない。答えが「YES」であっても「NO」であっても、文章の中から事実を見出し、自ら検証をする必要がある。

肖遠騎氏は今年の小論文の大きな特徴として、「弁別力の鍛錬」を挙げている「二元的、あるいは多元的な弁証関係を設けた問題が多く、受験生の理性的な思考や独自の判断力を試している」と述べている。天津の試験では、読み方が二つあり意味の異なる「調」という字を取り上げ、画家の「調色」と「南水北調」プロジェクトを引き合いにして、「流れに従う」と「型にはまらない創造」のバランスをとるアイデアを探る問題が出た。また北京では、論説文「計画の作成と努力」と叙述文「含英咀華」のいずれかを選択させ、論理的弁別力を試した上で生活と伝統を十分に体得することを強調しており、実践と感覚の両方を備えさせるという教育方針がアピールされている。

大学入試の小論文の出題内容が変わったことで、学校での授業内容にも新たな要望が出ている。北京師範大学の経験豊富な王寧教授は、「国語の授業は知識と実用性の結び付けをより強調すべき。言葉の組み立てからアイデアや論理へ、文章や生活を知る方向へと生徒たちを導いていくことだ」と見ている。

(中国経済新聞)