復旦大学感染・健康研究院院長張文宏氏、AI時代の医療と報道を語る 「魂」と「共感力」は代替不能と強調

2026/04/6 08:30

張文宏・復旦大学感染・健康研究院院長(復旦大学附属華山医院感染科主任)はこのほど、復旦大学新聞学院で特別講演を行い、医療と報道の共通点、さらにAI時代における両分野の役割について持論を展開した。

講演の中で張氏は、「医療において免疫システムが機能しなければ、身体は自らを攻撃する。同様に、報道の“免疫システム”が機能しなければ、社会は対立と分断に陥る」と指摘。報道の役割は単なる記録にとどまらず、真実の情報を提供することで社会の“免疫バランス”を維持することにあると強調した。

そのうえで、医療と報道をそれぞれ「人体」と「社会」における免疫システムに例えた。医療は身体を治癒し、事実を診断し、生理的リスクを低減する役割を担う。一方で報道は、真実の掘り起こしや流言の抑制を通じて、社会的リスクを抑える機能を持つとした。

AI技術やアルゴリズム推薦の普及により、医療と報道はいずれも大きな変革期にある。張氏はAIに対して「慎重に受け入れる」姿勢を一貫して示しており、過去には病院の電子カルテシステムへのAI導入を拒否したこともある。その理由について、「若手医師の成長を妨げる可能性がある」と説明した。

報道分野におけるAIの活用についても、張氏は同様に懸念を示す。AIは資料収集や誤字脱字の修正、さらには整った文章の作成まで可能である点は評価しつつも、「魂」と「共感力」は記者に固有の能力であり、AIでは代替できないと強調。「AIが生み出す文章は往々にして感情が欠けている。効率向上のためにAIを活用すべきだが、独立した思考をAIに委ねてはならない」と述べた。

新型コロナウイルス禍の際、張氏は温かみのある言葉と冷静な科学的判断で広く支持を集めた。その経験を踏まえ、「発信力の本質は共鳴にある」と指摘。「受け手の恐れや希望に共感できなければ、どれほど正確なデータであっても、それは冷たいコードにすぎない」と語った。

また、自身の世論における立ち位置については「やむを得ず“ニュースの人物”になった医師」と自嘲気味に表現。日常は外来診療や病棟業務、教育に追われ、他者の評価を見る時間はほとんどないと明かした。

その一方で、世論については「人を傷つけもすれば救いもする両刃の剣」と位置づけ、「傷つくことを恐れて広場を取り壊すのではなく、広場でいかに理性的に対話するかを学ぶべきだ」との考えを示した。

AI時代においても、人間の思考と共感の重要性を改めて訴える講演となった。

(中国経済新聞)