エヌビディアCEO、1兆ドル規模の計算需要と対中供給の進展を説明

2026/03/20 14:30

米半導体大手のNVIDIAを率いる黄仁勲最高経営責任者(CEO)は、2026年の開発者会議「GTC 2026」において、急拡大する人工知能(AI)需要の見通しや市場の懸念について詳しく語った。

黄氏は、AI向け計算需要について「2027年までに、Blackwellおよび次世代Rubinアーキテクチャに対する需要は少なくとも1兆ドル規模(約150兆円)に達する」との見通しを示した。この金額は、画像処理装置(GPU)など中核となる基盤の受注見通しに限ったものであり、中央処理装置(CPU)やネットワーク機器、記憶装置などの関連事業は含まれていないと説明した。現時点でも同規模の受注が見込まれており、実際の事業規模はさらに拡大する可能性が高いという。

同社は今回、半導体メーカーから「総合的なAI基盤企業」への転換を明確に打ち出した。講演では、生成と推論を軸とする「トークン経済」の概念を提示し、トークンをAI時代の基本単位と位置付けたほか、「AI工場」が今後の産業基盤になると強調した。また、Vera Rubinを基盤とする新たな半導体群も発表した。

一方で、AIの進展に伴う雇用への影響については、「AIによってむしろ仕事は増えている」と述べ、自身も「半年前よりさらに忙しくなった」と明かした。AIツールの普及によりプロジェクト数が急増し、成果のフィードバックも大幅に早まったと指摘。「パソコンやインターネット、携帯端末と同様、AIも人間をより忙しくする技術だ」との見方を示した。

企業経営における基本姿勢としては、「顧客に見放されないこと、価値創出を止めないこと、そして倒産しないことのバランスが重要だ」と語り、成長の中でも持続性を重視する考えを示した。

また、同社が約200億ドル(約3兆円)を投じて買収した米新興企業Groqについては、AIの推論処理における新たな需要に対応する戦略の一環と説明した。従来技術では「大規模・長文脈・低遅延」を同時に満たすことが難しかったが、同社の基盤技術と組み合わせることでこれを実現できるとし、将来的にはAI基盤の約25%を同技術が担う可能性があるとした。

オープンソースの動きにも触れ、AIエージェント「OpenClaw」を業界標準の一つとして位置付け、長期的に支援していく方針を示した。かつてのLinuxと同様に、AI分野でも開発者コミュニティを中心とした仕組みが急速に形成されていると指摘した。

ロボット分野については、「最大の課題は技術そのものではなく実装にある」とし、3~5年以内に大きな進展が見込まれるとの認識を示した。認知機能と運動制御の両面で開発が進んでいるという。

さらに、AIの利用については「法令を遵守し、実現できない能力を誇張しないことが重要だ」と述べ、過度な期待や不安をあおる風潮に警鐘を鳴らした。そのうえで、サイバーセキュリティ分野ではAIが防御機能として重要な役割を担うとの見方を示した。

中国市場についても言及し、最新のAI半導体「H200」に関しては輸出許可を取得し、複数の顧客向けに供給を再開していると明らかにした。受注も堅調で、生産体制は徐々に正常化しているという。

また、中国の自動車メーカーとの協力関係にも触れ、基盤技術の標準化を進めることで、海外市場での規制対応にも柔軟に対応できると説明した。

供給網については、台湾の半導体産業への依存は今後も続くとの認識を示し、TSMC(台湾積体電路製造)との連携の重要性を強調した。米国への大規模な生産移転については「短期間での実現は極めて難しい」とし、急拡大する需要に対応するためには世界全体の生産能力を活用する必要があると指摘した。

急成長するAI市場において、需要拡大と技術革新、さらに地政学的リスクが交錯する中、エヌビディアは包括的な戦略で対応を進めている。

(中国経済新聞)