中国の「微短劇」、東南アジアで人気拡大――スマートフォン発の映像コンテンツが文化交流の新たな担い手に

2026/01/22 14:45

近年、中国の「微短劇((1話数分の超短編連続ドラマ)」が動画配信サービスを通じて海外市場で存在感を高めており、とりわけ東南アジア地域で顕著な成長を見せている。関連データによると、中国の微短劇を配信する海外向けアプリはすでに300種類を超え、2025年の世界累計ダウンロード数は約12億1000万回、海外市場の総収益は約23億8000万ドルに達する見通しだ。

テンポの良い展開や分かりやすい感情表現、文化的な共感を得やすい内容が支持され、東南アジアでは「一気見」が定着するほどの視聴ブームが広がっている。

その代表例の一つが、蘇州を舞台にした微短劇『一梦枕星河(邦題:星河に夢を枕す/英題:A Dream Beneath the Starry River)』である。中国伝統工芸である蘇扇(そせん)の無形文化遺産継承者と、海外留学経験を持つ古城保護エンジニアが手を携え、歴史ある街並みと伝統文化を守っていく姿を描いた作品だ。

劇中には、蘇繍(そしゅう)、宋錦(そうきん)、緙絲(こくし)、評弾、昆曲といった無形文化遺産の要素が巧みに織り込まれ、古都・蘇州に息づく「伝統と現代の融合」が立体的に表現されている。2024年6月にシンガポールの新興メディア配信サービスで公開されると、「伝統文化をいかに次世代へ継承するか」という普遍的なテーマが、東南アジアの視聴者の深い共感を呼んだ。

中国の微短劇産業は近年、海外展開を本格化させており、東南アジアは重点市場の一つと位置付けられている。縦型画面での視聴を前提とし、1話あたり3分以内、全50~90話程度というコンパクトな構成が特徴だ。題材も、都市恋愛、家族ドラマ、幻想作品、推理・サスペンスなど多岐にわたる。

強い物語の起伏と前向きな感情表現により、短時間でも高い没入感が得られ、継続視聴につながっている。さらに、作品内で描かれる中国の自然風景、伝統衣装、都市景観は、東南アジアの視聴者の中国への関心を高め、関連アプリの利用拡大にも寄与している。

海外進出の加速に伴い、作品内容や流通経路も一層多様化している。2024年8月には、農村の食文化をテーマにした微短劇『有种味道叫清溪(邦題:清渓という名の味/英題:A Taste Called Qingxi)』が、シンガポールおよびマレーシアの新興メディアとテレビ局で同時に放送され、中国農村の暮らしや食文化の魅力を伝えた。

また、『逃出大英博物館(邦題:大英博物館からの脱出/英題:Escape from the British Museum)』『河姆渡的骨哨声(邦題:河姆渡の骨笛の音/英題:The Bone Whistle of Hemudu)』『别打擾我种田(邦題:農作業の邪魔をしないで/英題:Don’t Disturb Me While Farming)』など、「2024年国際微短劇コンテスト」で優秀賞を受賞した作品も、動画共有アプリを中心に東南アジアで高い評価を得ている。

2025年以降は、事業面での連携もさらに深まっている。インドネシア最大の通信事業者であるインドネシア・テレコムは、中国の微短劇配信プラットフォーム「フレックスTV(FlexTV)」と提携し、2万2200ルピア(1人民元は約2383ルピア)から7万7700ルピアまでの専用視聴プランを提供。

また、点衆科技傘下の「ドラマボックス(DramaBox)」は、東南アジアの現地通信会社と協力し、「通信容量とコンテンツを一体化したサービス」を展開することで、視聴のハードルをさらに引き下げている。

中国のネット文学、ネット映像作品、オンラインゲームからなる、いわゆる文化輸出の「新三本柱」は、世界各地で“中国ブーム”を生み出している。その中でも微短劇は、手軽で親しみやすい形式を通じて、中国の優れた伝統文化と現代中国の姿を、スマートフォンの画面越しに海外へ届ける存在となった。

米国の科学技術誌『マサチューセッツ工科大学テクノロジーレビュー』は、微短劇の台頭について、「中国文化が世界へ広がる新たな契機となっている。中国の娯楽産業が国際市場の需要を的確に捉える助けとなると同時に、海外社会がより立体的で現実的な中国像を理解するための窓口にもなっている」と評価している。

さらに、著作権の輸出や制作手法の共有も、現地化を進めるうえで重要な取り組みとなっている。インドネシアのデジタルメディア企業IDNタイムズは、中国微短劇の配信権を導入すると同時に現地制作部門を設立し、中国作品の語り口や演出テンポを参考にしながら、現地視聴者の嗜好に合ったオリジナル微短劇の制作を進めている。

中国発の微短劇は、単なる娯楽コンテンツの枠を超え、文化交流と相互理解を促進する新たなメディアとして、東南アジアをはじめとする海外市場で着実に存在感を高めている。

(中国経済新聞)