トヨタ第3四半期純利益、BYDの5.5倍超

2025/11/14 17:30

日本を代表するトヨタ自動車の第3四半期(7~9月)決算が、グローバル自動車業界の利益格差を鮮明に浮き彫りにした。トヨタの純利益は9320億日元(約430億元人民元)と前年比62%増の好調を維持した一方、中国EV最大手BYDの同期間純利益は78.23億元にとどまり、トヨタの約5.5倍に相当する規模だ。さらに、中国の8大盈利車企(BYD、奇瑞、Seres、長城、上海汽車、長安、一汽解放、東風)の総利益が203.55億元(約4420億円)と、トヨタの半分にも満たないという衝撃的なデータが、中国自動車産業の「増収不増利」構造を象徴している。中国市場の販売台数は前年比7.9%増の1925万台(1~10月、中国自動車流通協会)を記録する中、なぜこのような格差が生じているのか。

トヨタの決算は、営業収益12.38兆日元(約5937億元人民元、前年比8%増)と堅調な売上を背景に、純利益を大幅に伸ばした。営業利益は8395億日元(同26.44%減)と減少したものの、非営業収益(投資収益や為替差益)が純利益を押し上げた要因だ。グローバル販売台数は約240万台と安定し、特にハイブリッド車(HEV)のPriusやRAV4が欧米・アジアで利益率10%超を維持。中国市場でも一汽トヨタと広汽トヨタの合弁で約15万台を販売し、EVのbZシリーズが貢献した。トヨタの強みは、垂直統合されたサプライチェーンと円安効果で、価格競争の影響を最小限に抑えている点にある。

これに対し、BYDの第3四半期は減収減益に転じた。純利益78.23億元(前年比32.6%減)、売上高1949億8500万元(同3.1%減)。販売台数は111.42万台(同1.8%減)と鈍化し、研究開発費が前年比31.3%増の437億元に膨張したことが重荷となった。1~9月累計販売は326.1万台(同18.6%増)と世界EV首位を維持するが、利益率は4.5%前後と低迷。トヨタの純利益を単純計算すると、BYDの5.5倍(430÷78.23≈5.5)となり、中国最大手が「ボリューム優先」で利益を犠牲にしている実態が露呈した。

さらに深刻なのは、中国8大盈利車企の総利益がトヨタの49%に過ぎない点だ。

総計203.55億元に対し、北汽藍谷(-11.17億元)と広汽(-17.74億元)は赤字続き。中国全体の1~9月生産は2405万台(同11%増、乗用車連盟データ)だが、利益総額は前年比微減の見込み。業界平均利益率は3.5%(7月時点、同-17%)と過去最低水準だ。グローバルではVW(-15%)、Tesla(-71%)も減益だが、トヨタの回復力は突出している。

この格差の根本原因は、中国市場の「価格戦争」と「内巻き」現象にある。2023年以降、BYDの低価格EV投入を機に、XiaomiやLi Autoが追随。2025年上半期だけで65モデルが10~20%値引きを実施。上海モーターショーではBYDが22モデルに最大3.2万元補助、奇瑞が5.5万元値引きを連発。在庫は前年比30%増(CPCA)。これにより、取引価格が下落し、ディーラー利益が蒸発。BYDの売上原価は14.8%増に対し売上高は12.8%増で、マージン圧縮。奇瑞やGreat Wallも30%超の利益減だ。政府の「以旧換新」補助(NEV2万元/台)が販売を後押しするが、補助依存が価格下落を加速させている。

トヨタはこれを回避し、「プレミアム化」を推進。中国ではbZ7(Huawei搭載EV)で差別化、HEV比率49%で高単価を確保。グローバル分散(米国電池工場稼働)で中国依存を軽減し、金融事業(利益6635億円、同19.9%増)も安定収益源だ。一方、中国車企はNEV偏重でR&D投資が急増。長安の販売費56.25%増、政府補助減で純利益30.55億元(同-14.66%)。東風は主業ベースで-1.15億元赤字。業界全体のR&D総額は前年比25%増(みずほ銀行中国レポート)だが、中小企業の乱立で投資が分散。淘汰が進む中(2025年予測:100社超倒産)、大手も「生き残り投資」に追われる。

市場構造の歪みも大きい。上汽や一汽の合弁依存(VW/トヨタ)がNEVシフト遅れでシェア縮小(上汽VW4.5%、同-0.1ポイント)。サプライチェーンでは帳期問題(平均172日)が中小疲弊を招き、米中摩擦(EU関税45%)で部品コスト上昇。トヨタのROE20%に対し、中国平均5~7%と効率格差は歴然だ。

専門家は「中国車企のボリューム戦略は限界を迎え、質の成長へシフトが必要」と指摘(黄奇帆元重慶市長)。BYDの輸出拡大(1~9月34.3万台、同140%増)や上汽の逆成長(+15%)は光明だが、2025年は「淘汰の年」。トヨタの多角化(HEV/EV/水素)が示すように、持続可能な収益モデルが鍵だ。中国市場の変革は、グローバル業界の未来を占う試金石となるだろう。

(中国経済新聞)