『南京照相館』がアカデミー賞国際長編映画賞の候補に

2025/09/30 11:12

中国映画『南京照相館』(英語タイトル:Dead to Rights)が、第98回アカデミー賞の国際長編映画賞の候補作品に選出された。この作品は、1937年の南京大虐殺を背景にした歴史ドラマであり、申奥(シェン・アウ)監督による力作である。主演には劉昊然(リウ・ハオラン)、王伝君(ワン・チュアンジュン)、高葉(ガオ・イェ)、王暁(ワン・シャオ)、周游(ジョウ・ヨウ)、楊恩又(ヤン・エンヨウ)、そして原嶋大地(ハラシマ・ダイチ)といった実力派俳優が名を連ねている。本作は、戦争の混乱の中で写真館に避難した市民たちが、日本軍の残虐行為を暴くために命を賭して写真の証拠を残そうとする姿を描いている。

『南京照相館』は、1937年の日中戦争中の南京占領を舞台に、過酷な状況下での人間の勇気と抵抗を描いた作品である。物語の中心は、郵便配達員の阿常(アーチャン)が、日本軍の写真現像者として偽ることで生き延びようとする姿だ。彼は南京の写真館を一時的な避難所として、中国の兵士や市民を匿う。しかし、日本軍の残虐な行為を目の当たりにした阿常は、命を危険にさらしながら避難民を安全な場所へ移送し、虐殺の証拠となる写真を公開する決意をする。この物語は、南京大虐殺という現代史の暗い一章を、写真というユニークなモチーフを通じて描き出している。

『南京照相館』は、136分(または137分ともされる)の上映時間の中で、戦争の残酷さと人間の尊厳を丁寧に描き出す。撮影監督の曹郁(ツァオ・ユー)による映像美、彭飛(ポン・フェイ)の音楽、そして張一凡(ジャン・イーファン)の編集が、物語の緊張感と情感をさらに引き立てている。制作は中国電影集団とOmnijoi Media が担当し、2025年7月25日に中国で公開された後、オーストラリア、ニュージーランド、ロシアなどで順次公開された。国際的な興行収入は3億6573万ドル(約544億円)に達し、特に中国市場での興行収入が3億6500万ドル以上を記録するなど、商業的にも大きな成功を収めている。

批評家からは、「これまでの南京大虐殺をテーマにした映画の中でも最高峰」との声が上がっており、繊細な演出と魅力的なキャラクター造形が、歴史的出来事の恐怖をさらに際立たせていると評価されている。特に、写真現像という一見地味な行為を通じて、虐殺の証拠を残すという抵抗の形が、観客に深い印象を与えている。英語タイトルの「Dead to Rights」は、「犯行現場を押さえられる」という意味合いを持ち、写真による証拠保全という物語の核心を象徴している。このタイトルは、映画の内容を適切に反映しているとされ、国際的な観客にも訴求力を持つと評価されている。

『南京照相館』が第98回アカデミー賞の国際長編映画賞に中国代表作品として選出されたことは、この作品の芸術的・歴史的価値が国際的に認められた証である。中国はこれまでにもアカデミー賞に多くの作品を送り出してきたが、本作はその重厚なテーマと高い完成度から、受賞の有力候補として注目されている。映画は、戦争の悲劇を単なる歴史の再現にとどまらず、人間の勇気と希望を描くことで、普遍的なメッセージを伝える。特に、写真というメディアを通じて真実を後世に残そうとする登場人物たちの行動は、現代社会においてもジャーナリズムや記録の重要性を想起させる。

(中国経済新聞)