国家市場監督管理総局は20日、小米汽車科技有限公司(以下、小米〈シャオミ〉汽車)が2024年2月6日から2025年8月30日までに生産した電動車「SU7」標準版の一部、計11万6,887台をリコールすると発表した。
リコール理由と対象範囲:同局の発表によると、対象車両は「L2高速領航(ナビゲーション)支援運転」機能を使用する際、特定の極端なシナリオにおいて認識・警告・対応が不十分となる可能性があり、運転者が即時介入しなければ衝突リスクが高まる恐れがあるという。安全上の重大な懸念が理由とされた。
SU7は2024年3月に正式発売。標準版21万5,900元(約432万円)、PRO長航続版24万5,900元(約492万円)、MAX版29万9,900元(約600万円)で販売され、同年4月から初回納車を開始。これまでに累計30万台以上が引き渡されており、今回のリコールはその約30%に相当する。

新国標との関係:今回のリコールは、17日に工業・信息化部(工信部)が意見公募を開始した「智能網聯汽車組合駕駛支援系統安全要求」(新国標)とも関連している。新国標は車線保持やナビゲーション支援といった機能について、人間とシステムの協調、安全設計、情報セキュリティ、データ記録などを網羅的に規定。
特に注目されるのが「B類道路環境施工区域探測与応答能力試験」で、施工区間における障害物回避試験が設定されている。このシナリオは、2024年3月29日に安徽省銅陵市の高速道路で発生した「SU7爆燃事故」の状況をほぼ再現したものだと指摘されている。
事故の経緯:当該事故では、SU7標準版が工事区間に差し掛かった際、車両はNOA(ナビゲーション・オン・オートパイロット)を作動させた状態で時速116kmで走行。障害物を検知後に減速と警告を行ったが、ドライバーが自動運転を解除し手動操作に切り替えてから、わずか3秒ほどで車両が隔離帯のコンクリートブロックに衝突。3人が死亡する惨事となった。
小米(シャオミ)側は事故直後の4月1日、「システムは障害物を検知し減速を開始、運転者がその後に操舵を行った」と説明していたが、極めて短い反応時間が安全議論を呼んだ。
業界の反応:自動運転関連企業の幹部は取材に対し、「自動車は単なる電子消費財ではなく、一度事故が起きれば命に直結する。安全性こそ最優先であり、極端なシナリオへの対応力強化や冗長設計の導入が不可欠だ」と指摘。事故を受け、各社は「接管率の低減」や「安全冗長性の確保」を掲げる動きを強めている。
(中国経済新聞)