2025年11月12日、2025中国新メディア大会が湖南省長沙市で開幕した。大会のテーマは「AIを活かした協働と仕組みづくりの刷新」。メディアとテクノロジーの融合が加速するなか、人工知能(AI)や大規模言語モデル、デジタル文化産業をめぐる議論が、国内外の関係者を集めて行われた。
今年の大会は、開幕式と主フォーラムを中心に、内容の革新、技術応用、国際発信、若者、社会的責任などをテーマとした七つの分科フォーラムで構成される。また、「2025中国新メディア技術展」をはじめとする六つのテーマ活動も実施され、最新のメディア技術と文化コンテンツの潮流が披露された。

とりわけ注目を集めたのは新メディア技術展で、AIを活用したニュース制作システム、デジタルアナウンサー(AIによる仮想人物)、取材ロボットなどが展示され、メディア現場の自動化・高度化を示す象徴的な存在となった。さらに、仮想現実(VR)技術による大規模没入体験プログラム「唐代への夢の旅」では、来場者が唐代の都市や宮殿を仮想空間で歩き、歴史文化を体験できる企画が人気を集めた。
開幕式では、中央宣伝部の幹部がスピーチを行い、AIを中心とした技術革新がメディア産業にもたらす構造的転換点を強調した。取材から編集・配信まで、すべての工程をAIで支える仕組みが今後の方向性であるとの見解を示し、同時にAI運用に伴うリスク管理や安全性確保の必要性も指摘した。
開催地である湖南省の関係者も、同省が文化産業と新メディア産業の双方で重要な地位を持つことを強調し、AI技術を基盤とした新メディア集積地としての発展を後押しする考えを示した。
大会期間中には、「中国スマートメディアイノベーション発展報告(2024〜2025)」や、メディア融合の優良事例をまとめた「融合メディア技術ケースデータベース」のほか、企業の社会的責任に関する年次報告などが相次いで発表された。これらは、メディア融合の実践モデルを提示するとともに、業界全体の発展方向を示す資料として注目されている。
中国新メディア大会は2018年から開催され、メディア改革と産業イノベーションを議論する全国的なプラットフォームとして定着してきた。今年の大会では、メディアのデジタル転換が「単なる道具の更新」から「システムそのものの再構築」へと進む段階に入ったとの認識が共有されている。AI技術の導入が主流メディアにもたらす可能性と課題、そして価値観や信頼性をどう守りながら技術革新を進めるかが、重要な論点として浮かび上がった。
長沙を中心とする湖南地域は、近年「メディア融合・文化創造の拠点」として存在感を高めており、今回の大会はその地位をさらに高める契機になりそうだ。メディア産業の再編が進むAI時代において、中国の新メディアがどのような道を歩むのか。今回の大会は、その未来像を示す重要な場となった。
(中国経済新聞)
