清華教授魏少軍:米中科技脱鉤は避けがたい、半導体産業の自立に自信

2025/09/13 14:30

「米中間で一部の分野で妥協できるかどうかは大きな問題だが、私個人としては米中が一致するとは思わない」。9月11日、シンガポールで財新メディア主催の「アジア・ビジョン・フォーラム2025:変局時代の亜洲機会」において、清華大学教授で国際電気電子学会士の魏少軍氏が、米中間のAI分野での根本的な対立を指摘し、両国間の科技脱鉤(技術的分離)が避けがたいとの見解を述べた。魏教授は、米国の中国排除戦略が加速する中、中国の半導体産業が急速に成長し、自立に向けた強固な基盤を築いていると強調した。

魏少軍教授は、米中両国がAI分野で根本的な利益対立を抱えていると分析した。米国は中国を市場から排除し、中国以外の世界市場を独占しようとしている一方、中国は国内中心の科技体系を構築しつつ、自国技術の海外展開を進めているという。「2018年にフランスのドミニク・ド・ヴィルパン前首相が、中国と米国が科技を脱鉤し、二つのシステムを形成すると公言した。当時は信じられなかったが、6年経った今、私はこの見解に同意せざるを得ない。将来、米中は二つの体系を持ち、協力はなくなるだろう」と語った。ド・ヴィルパン氏の指摘は、2018年の米中貿易摩擦の初期段階でなされたもので、両国間の技術的分断が現実化しつつあることを象徴している。

さらに、魏教授は米国の中国科技抑圧戦略の歴史を振り返った。第二次世界大戦後、米国は同盟国とパリ統制委員会(COCOM)を設立し、社会主義国への重要物資・技術輸出を制限。1990年代にはこれがワッセナー・アレンジメントに置き換わり、中国への技術輸出を継続的に制限した。オバマ政権時代も中国発展を抑制する公的発言が相次いだ。近年では、トランプ政権第1期の2018年から中国の科技・半導体産業への全面打撃が始まり、バイデン政権下ではオランダ、日本、韓国を巻き込んだ対中半導体核心技術輸出規制が強化。中国半導体産業を米国より「2世代遅れ」にさせるのが米政権の恒久目標だという。米政府は2025年から半導体やAI分野での対中投資規制を決定し、デカップリングをさらに推進している。

「米国がチップを売ってくれなければ、自分たちで作らざるを得ない。私が学生時代は米国や西側から学んでいたが、今は対立の立場にある」と魏教授は指摘。2018年の米中科技制限強化が、逆に中国半導体サプライチェーンの発展を加速させた。2018年から2024年の6年間で、中国のファブレスチップ設計(Fabless)産業は156%成長、半導体委託封測(OSAT)産業は43%成長、チップ製造産業は144%成長した。主要企業では、2023年の世界トップ10ファブレス設計企業に中国企業2社、トップ10晶圓代工企業に3社、トップ10委託封測企業に4社が名を連ねる。投資面でも、2018年以降の中国半導体投資が急増し、国産半導体市場シェアは2018年の23.5%から2024年の49.0%に上昇した。中国半導体市場規模は2024年に1851億ドルに達し、数量ベースでは世界最大で、アメリカ市場(1951億ドル)を上回る出荷量を誇る。中国は世界の工場であり、最大市場でもあるため、中国半導体産業の発展に自信を持っていると述べた。実際、2024年の中国半導体市場はグローバル販売の34%以上を占め、消費大国としての地位を確立している。政府の支援も後押しし、2024年5月には475億ドルの国家集成回路基金第3弾が設立された。

一方で、魏教授はアジア独自の課題も指摘した。アジアにはアジア人独自の伝統文化があるが、GPU(グラフィックス処理装置)の技術ルートは米国文化で磨かれたものだ。現在、中国やアジアの大規模モデルはすべてGPU技術に依存しており、「これはアジアにとって致命的な問題だ。中国やアジア地域で新たな計算アーキテクチャが生まれる必要がある」と訴えた。AIやIoTの進展に伴い、米国依存からの脱却が急務だと強調した。キーワードは「自立自強」、みずからの力で先端科学技術を発展させていくという言葉だ。

米中科技脱鉤の進行は、グローバルサプライチェーンの再編を促す一方、中国のイノベーションを加速させる可能性が高い。魏教授の指摘は、アジア諸国が変局時代にどう対応するかを示唆するものだ。フォーラム参加者からは、「自立自強(自力更生)の重要性が高まっている」との声が上がった。

(中国経済新聞)