韓国仁川市沖の干潟で9月11日未明、70代の中国人男性が満潮で取り残されたのを救助中、韓国海洋警察庁(海警)の李在錫(イ・ジェソク)警長(34)が心臓発作を起こし死亡した。李警長は自身の救命胴衣を被害者に譲り、自身は無防備のまま海中へ飛び込み、行方不明となった後、遺体が発見された。中国人男性は病院で治療を受け、一命を取り留めた。
韓国海洋警察署によると、事故は11日午前4時頃、仁川市甕津郡霊興面の花島沖約1.4キロメートル付近で発生。李警長は単独で現場に到着し、泥濁の干潟で動けなくなった中国人男性を発見した。男性は貝類採取中に潮の満ち引きで孤立、失温症状を起こしていた。李警長は即座に救命胴衣を脱ぎ、男性に着用させた後、腕で抱えて岸辺へ泳ぎ出したが、波の高さ2メートル超の荒波に飲み込まれ、午前9時41分頃に遺体が回収された。死因は心臓突然死とみられる。

李警長は海警の霊興派出所に所属し、夜間救助用の照明システムや「干潟救援牽引装置」を開発するなど、技術革新に貢献していた人物。事故後、遺族は「2人1組の原則が守られなかった」と海警当局を批判。海洋警察庁は内部調査を始め、救助手順の見直しを検討する方針だ。
12日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は李警長に「大韓民国玉条勤政勲章」を追授。青瓦台(大統領府)の姜勲植秘書室長が代わりに霊前に勲章を奉納し、「暗闇の中、泥濁に躊躇なく飛び込んだ彼の、生命を守る使命感を称える」と追悼の意を表した。大統領は声明で、「彼の崇高な犠牲精神を決して忘れない。国民の安全を守る海警の誇りだ」と強調し、遺族と同僚に哀悼の意を寄せた。
追悼式は15日、仁川海洋警察庁本部で海警長官級の厳粛な形式で行われる予定。海警博物館には李警長の制服が展示され、市民からの花束が絶えない。
一方、中国駐韓国大使館は12日、声明を発表。「李在錫警長の殉職に対し、心からの哀悼を捧げる。遺族に誠挚な慰問を申し上げる」とし、戴兵大使が海警庁の金勇進庁長に哀悼の書簡を送った。中国国内では李警長の行動が「国境を超えた人道的勇気」として称賛され、SNS上で中韓の友好を象徴するエピソードとして広がっている。
(中国経済新聞)