8月6日、重慶市永川の環状線内周り東路で、無人運転の車が工事現場の溝に転落する事故が発生した。バイドゥの自動運転システム「ロボタクシー」(Robotaxi)を搭載した白い車がさかさまに約3メートルの深い溝に転落。乗っていた女性は自力で這い上がって、大きなけがなどはなかった。地元自治会の関係者によると、車は「単独でひとりでに落ちていった」とのことである。
工事現場は高さ約1.2メートルのバリケードで囲まれていた上、「この先工事中」などの注意書きもあった。この工事は市が請け負ったものという。「ロボタクシー」の営業担当はこの事故について、「安全はわれわれ無人運転乗用車の一番のルールだ。目下、実証実験で1億キロメートル以上走行し、事故は発生していない」と表明した。バイドゥはこれまでのところ、この事故に対して声明を出していない。
「ロボタクシー」を搭載した6代目の無人車「Apollo RT6」は、センサー38か所と演算回数が1200 Topsというシステムを備えた、L4の自動運転対応車である。今年6月には新たにブラインドスポットレーダーを取り入れた上、「Apollo ADFM LLM(大規模言語モデル)+ハードウェア+安全構造」との方策に沿って、10重のフェイルセーフと6重のMRC(セキュリティーポリシー)を備えた。安全水準についてバイドゥは以前、中国製のジャンボ機「C919」に匹敵すると表明していた。

今回の事故は、障害物の検知や複雑な交通状態への対応力が問われるものとなった。業界関係者によると、「多様なセンサーを備えた自動運転車では、静止した障害物の検知はオーソドックスな状況であって、今回の事故はセンサーの検知やアルゴリズムの適用または状況の適応性など、様々な要因が絡んだものではないか」という。
バイドゥは以前、「ロボタクシー」について、自動運転事業の大切な実用化案件と位置づけていた。創業者である李彦宏氏は今年2月、「世界政府サミット」で、「事故発生率は手動運転時の1/14で、交通事故の死亡率を削減するもの」と述べていた。李氏はまた、2025年第1四半期の決算報告会で、「ハードウェアや人の手にかかるコストが削減したことで規模による効果が表れており、利益につながる道のりが鮮明に見えたほか、この事業を成長維持への重要な原動力としていく」と語っていた。
バイドゥの無人運転車は過去にも事故歴がある。2023年7月には、あるブロガーが発表した動画で、「『ロボタクシー』の試験車両が車線変更の際に後方の車と接触し、当て逃げした」とのコメントがあった。去年7月には武漢で、無人運転のタクシーが信号無視をしていた歩行者と軽微な接触事故を起こしており、バイドゥは「発生後ただちに警察の処置に協力し、病院に搬送した」と表明している。
自動運転技術について業界内では、「国内外で急速に普及しつつあるが、複雑な道路状況や工事現場などには対応しきれていない」と分析している。事故調査や後の再発防止策が技術の安定性や市民の受け入れ度合いを決める大きな参考になるという。
(中国経済新聞)