2025年、中国では中小銀行の統廃合が過去に例を見ない規模で進んでいる。国家金融監督管理総局が公表した行政許可情報や、企業情報サービス「企業預警通」の統計によれば、今年に入り合併や解散の認可によって登録抹消された銀行はすでに368行に達し、昨年一年分を上回った。このうち、176行が村鎮銀行(地域密着型の小規模銀行)で、退出した銀行の約半数を占める。
金融業界では、中小銀行を「減らし、質を高める」動きはリスク低減と金融システム安定化につながるとの見方が多く、今後も合併・再編が加速するとの見通しが強い。
■ 村鎮銀行・農村商業銀行の退出が相次ぐ
11月26日、国家金融監督管理総局・大連局は大連甘井子浦発村鎮銀行の解散を承認した。同銀行の資産・負債、業務、職員などは、主な発起人である浦発銀行(上海浦東発展銀行)が引き継ぐ。前日には、富民浦発村鎮銀行も浦発銀行に吸収され、解散している。
広東省でも再編が続く。11月25日、深圳坪山珠江村鎮銀行と鶴山珠江村鎮銀行の2行が、広州農村商業銀行による吸収合併を発表した。合併後は両行が法人格を失い、広州農村商業銀行の支店へと再編される。
さらに、11月だけでも、陝西省咸陽市の秦都農村商業銀行、渭城農村商業銀行、遼寧省朝陽市の柳城村鎮銀行など、少なくとも28行が監督当局から解散を認められた。
企業預警通の統計では、11月28日時点で合併による抹消が125行、解散による抹消が243行の計368行。特に村鎮銀行は「合併67行・解散141行」と目立ち、農村商業銀行も「合併32行・解散47行」と再編の波が広がっている。

■ 「数は多いが規模は小さい」 村鎮銀行が抱える脆弱性
村鎮銀行は中国全体の銀行数の3分の1以上を占めるが、資産や負債の規模は全体の1%に満たない。信用格付機関・聯合資信の報告では、村鎮銀行の構造的な弱点として次の点が挙げられている。
1.取り扱う商品・サービスが限られ、預金・融資に偏っている
2.スマホ向けサービスが整備されておらず、デジタル化が遅れている
3.地理的な条件も相まって、ネット金融時代の“孤立した存在”になっている
4.株主構成が複雑で、ガバナンスが弱い
5.経済構造転換の影響で、不良債権が増えている
こうした要因から、規模の小さい銀行は経営悪化に陥りやすく、リスク管理の観点から統廃合の必要性が高まっている。
■ ガバナンス不全が再編加速の背景に
招聯金融の董希淼(トン・シーミャオ)首席研究員は、中小銀行の再編が進む背景には、歴史的な負債問題や現下の経営環境の変化、また景気循環や構造的課題といった複数の要因が絡んでいると指摘する。
特に地方の金融機関では、株主の経営能力が弱かったり、長期投資の意欲が乏しかったりするケースが多いという。「ガバナンスの不備や監督機能の不足は、中小銀行の経営に最も大きな足かせとなっている」(董氏)
■ 市場原理と法治に基づく再編でリスク削減
郵政貯蓄銀行の研究員である婁飛鵬(ロウ・フェイポン)氏は、中小銀行の合併や解散は、市場原理と法令に基づくリスク処理として重要な手段だと評価する。「経営リスクの高い金融機関を減らし、リスク処理コストも抑えられる。金融システムの安定確保には不可欠だ」。政府は、金融リスクの“早期発見・早期処理”を重視しており、中小銀行の統廃合は今後も続くとみられる。
■ 「減らして質を高める」流れは続く見通し
2025年は、中小銀行再編が本格化する転換点となった。
今後は、規模の小さな金融機関の退出に加え、ガバナンスの改善、資本の強化、デジタル化の推進といった「質の向上」が重視される。中国の中小銀行の勢力図は、今後数年でさらに大きく変わる可能性が高い。
(中国経済新聞)
