新型コロナウイルス収束後も続く「香港市民の北上消費」(深圳市へ消費)ブームの影響により、香港の飲食業・小売業は依然として厳しい経営環境に直面している。6月23日、香港の不動産仲介大手「美聯工商舗」は最新レポートを発表し、2025年第1四半期末時点で、中環(セントラル)、尖沙咀(チムサーチョイ)、旺角(モンコック)、銅鑼湾(コーズウェイベイ)の4大中心商業エリアにおける空き店舗数が897軒、空室率は12.1%に達したことを明らかにした。
これは過去4年半で最も高い水準であり、パンデミック最中の2020年第3四半期末(12.5%)に迫る数字である。
香港政府統計処のデータによると、2025年4月の小売業売上高は289億香港ドルで、前年同月比2.3%減少。これで14か月連続の前年割れとなった。香港小売管理協会の謝邱安儀会長は、「米中関税摩擦が香港の株式市場に悪影響を与え、市民の消費マインドを冷やした」とし、さらに「復活祭や清明節の長期休暇中に多くの市民が中国本土や海外に出かけたことも、地元の小売市場にとってマイナス要因となった」と指摘した。
同じく美聯工商舗のレポートによると、2024年第3四半期から2025年第1四半期の間に、4大商業エリアでは847店舗が閉店または移転し、閉店率は11.4%にのぼった。一方で、同期間内には新規開業も786店舗に達し、空室を埋める動きも活発であることが示されている。これは、香港の不動産市場が依然として一定の活力を保っていることを示唆している。
また、店舗賃料の下落を受け、内地(中国本土)や日本・韓国のブランドが香港に進出し、実店舗を開設する動きも活発化している。これにより、香港のリテール市場は多様化・国際化が進んでいる。
不動産サービス大手の仲量聯行(JLL)香港店舗部門の上級董事(ディレクター)である陳永慧氏は、「香港中心部の店舗賃貸市場は依然として活発であり、大衆向けブランド、フィットネスジム、証券会社などが積極的に出店している」と述べている。
香港差餉物業估價署の統計によれば、2025年4月時点で、香港のリテール不動産の販売価格指数と賃料指数はそれぞれ前年比15.2%と6%の下落となっており、価格・賃料ともに軟調な推移を続けている。
仲量聯行が発表した「2025年第1四半期市場概覧」によると、店舗オーナーの多くが賃料ディスカウントを提供してテナントを誘致・維持しようとしており、これが賃料下落をさらに促進している。2025年第1四半期、香港の中心部にある路面店の賃料は前期比で0.8%減少、高級ショッピングモールおよび超高級モールの賃料もそれぞれ0.3%と0.2%の下落となった。
(中国経済新聞)