5月30日、日本政府は、中国向けに停止されていた日本産水産物の輸出再開に向け、日中両政府が合意したことを正式に発表した。中国による輸入停止措置は、東京電力福島第一原発からの処理水海洋放出を受けて2023年8月から実施されていたが、今回の合意により再開に向けた具体的な手続きが始まる。
林芳正官房長官は30日の会見で、「輸出再開に必要な技術的要件について、日中双方で合意に至った」と述べた。今後、日本国内の水産物輸出業者の加工・保管施設について再登録手続きが完了次第、対中輸出が再開される見通しとなっている。
ただし、処理水放出前から中国側が輸入規制を行っていた福島県や東京都など10都県の農水産品、及び牛肉など一部の品目については、今回の輸出再開の対象外となる。
輸出再開に向けた動きは、日中両政府による4回にわたる協議を経て、5月28日に北京で開催された協議で正式に合意された。背景には、中国側が日本との関係改善を模索している事情があるとされる。外交筋によれば、「アメリカとの対立が長期化する中、日本との関係を改善し、経済面でも投資を呼び込みたいという中国側の意図が影響している」との見方がある。
また、中国政府は6月にも日中韓首脳会談の開催を日本側に打診しており、その前段階として輸出再開に向けた道筋をつけた形だ。
中国外務省の林剣報道官は30日の記者会見で、「科学や安全の原則、国内法規と国際貿易ルールに基づき、輸出再開要請を慎重に検討する」と表明。日本側が水産物の品質と安全性を保証し、中国の監督・管理基準を満たすことを約束したことも明らかにした。
一方で、中国日本商会は「日中合意を心から歓迎する」とのコメントを発表し、今後の全面的な輸入再開やその他の輸入規制の撤廃、さらには日本製品への風評被害の払拭にも期待を示した。
輸出再開には、日本国内の施設の登録や放射性物質の検査といった手続きが必要となり、実際の再開までは数カ月を要する見込み。また、依然として対象外となっている10都県の農水産物や和牛の輸出解禁に向けては、今後も日中間の交渉が継続されることになる。
林官房長官は「今回の合意は大きな節目だが、引き続き全面的な輸入規制撤廃を求めていく」と強調した。
(中国経済新聞)