LinkedInの中国法人によると、これまでIT業界が中心だった中国企業の海外進出について、新エネルギー、製薬、飲食、自動車といった製造業も乗り出しており、その中でスマート製造分野を重点とする会社が増えている。同社マーケティングソリューションの年間売上高の中で、製造業が40%を占め、事業の年間成長率は20%以上という。
中国は度重なるアメリカの追加関税策で電子部品や自動車部品、消費財関連が相当のダメージを受け、海外への投資や市場拡大に慎重な姿勢を示し始めている。
Horionの親会社で30年にわたりODM事業を手掛けている製造型企業のKTCテクノロジー(康冠科技)は今、ODMやOEMから自社ブランドのOBMへの転換を進めており、このところ世界各国で技術サポート体制やサービスセンターを設け、スマートディスプレイの市場を拡大している。
Horionは今、海外でビジネスチャンスを探る必要性が高まっている。海外事業販売・市場部の責任者であるRyan氏は、「リスクは1か所に集中させない。よって今年は、中南米や北米など成長地域に重点を置く一方、アルゼンチン、チリ、ブラジルでも販売チャネルを集め、拡大していく」と述べている。またさらに、「南アジアについては、中国との関係が落ち着いてきたインドを重点に据える。このほか、中東やアフリカ、東ヨーロッパなど教育に力を入れている国々も開拓していく」とのことである。
中国の製造業は海外進出に際し、大量の人材を確保する必要がある。
自動車エレクトロニクスを手掛けるDesay SVの副社長である林広球氏は、海外進出について、「5年前は事業開拓が中心であり、取引先と接触して受注を得ていた。以前の研究開発については必ずしも優位に立っていなかったが、応用開発については工程化やコスト改善を果たして海外でも高く評価されるようになった」と変化している様子を語った。海外での販売実績が伸びて製品も量産化していることで、販売ネットワークの拡張のほか、技術サービスの向上など新たなニーズも発生しており、こうした中で現場を支える大量のエンジニアリング関係者が必要だという。
エンジニアの層が厚い中国では、「欧米で研究開発し中国で製造」という従来の路線から、「中国で研究開発し海外で製造」というモデルを形成する会社も現れている。開発力や価格決定権を備え、技術規格を定められる会社も、中国のスタンダートや産業体系を海外に導入し、世界のバリューチェーンで地位を引き上げている。
こうした中で会社は採用時に、「技術開発+運営の現地化」という平行路線を重く見ている。また、異文化をまとめるスキルを持つ人材が必要となる。「製品の海外進出」から「ブランドの現地化」への改革に密接にかかわって来るものである。
知能化への改革が進む中国では、製造業は技術革新力を伸ばした上で、世界で評価されるブランドイメージを打ち立てる必要がある。
Horionは、差別化による競争でターゲットを獲得し、改革精神を持つ価格のリーダーとなる、という位置づけを選んでいる。
LinkedIn中国法人の代表である王茜氏は、「現地の『国情、ビジネス事情、人情』をトータル的に知る必要がある。データ解析のサポートも必要、さらにはプロパー人材により実践し検証する必要もある」と述べる。2023年はモデルチェンジを果たして、まさに「中国企業の海外進出サポート」という新たなイメージで市場に立脚し、2024年はパートナーとする会社が2倍に増え、2000社を超えたという。
関税障壁や人材不足、認知度といった様々な試練を迎えている中国の製造業は今、エンジニアの層の厚さを技術規格における発言権に変え、サプライチェーンを産業チェーンの主導的存在にしようとしている。これは「世界の工場」から「世界の知能化」への躍進の大切な一歩となる。
(中国経済新聞)