中国政府が4月初めに7種類の中・重希土類元素の輸出を制限する措置を発表したことを受け、世界の希土類市場が大きく動揺している。5月1日までに、欧州におけるジスプロシウム(Dy)の価格は850ドル/kgに達し、テルビウム(Tb)は3000ドル/kgへと上昇。4月初旬と比べて210%以上の急騰となった。
希土類は「産業のビタミン」とも呼ばれ、再生不能な戦略的資源として、新エネルギー、新素材、航空宇宙、防衛、電子機器など、さまざまな先端産業に不可欠である。中でも、今回輸出規制の対象となった7元素は、世界的に供給が限られている中・重希土類であり、その大半を中国が供給している。
アメリカの国防関連調査機関「ゴヴィニ(Govini)」による最新報告書では、1900種類以上の米軍兵器システムが中国産の鉱物資源に依存していると指摘。特に今回の規制対象の中でもガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)は、次世代戦闘機「F-47」をはじめとした先進兵器の各種サブシステムに広く使用されているという。
中国の輸出管理強化により、海外市場では希土類の供給不足が避けられない見通し。専門家は「短期的には海外価格が国内価格を上回る構図が続き、中期的には価格の収束が予想されるが、世界全体の価格水準は上方にシフトする可能性が高い」と分析している。
今後、米国やEUをはじめとする先進国は、希土類のサプライチェーン再構築や国内資源の開発、リサイクル技術の強化を急ぐ必要がある。特に、防衛産業における依存度の高さを踏まえ、地政学リスクを回避するための資源戦略の再設計が迫られている。
(中国経済新聞)