アメリカのトランプ大統領は現地時間4月8日、導体受託生産の世界大手であるTSMCに対し、アメリカ国内に工場を建設しない場合は100%の関税を課すと伝えたと述べた。TSMCの株価は4月9日に3%以上値下がりし、この5営業日で計16%以上の値下がりとなっている。
これはトランプ大統領による半導体業界のサプライチェーンに対する最新の圧力である。半導体はこれまで相互関税策の対象外となっていたが、アメリカの株式市場ではかなりの打撃を受けている。エヌビディアは株価がこの5営業日で計12%以上値下がりし、時価総額は2.3兆ドルまで落ち込んだ。AMDに至っては24%近くも値下がりしている。
エヌビディア、AMD、アップルなどに半導体を供給しているTSMCも、今回の貿易摩擦の「嵐」に巻き込まれており、去年末まで1兆ドルを超えていた時価総額が今は約7300億ドルまで下がっている。
TSMCの創業者である張忠謀氏は以前、エヌビディアのCEOであるジェンスン・ファン氏から半導体製造のパートナーに選ばれた際に、「ファン氏は当社にすべてを任せたいと言ってくれた」と述べていた。

アメリカの追加関税の対象範囲が拡大したことでTSMCにも影響が及び、これによりエヌビディアのサプライチェーンも大きな試練を受けることになる。
ある投資家は、「エヌビディアは半導体を生産してはいないがハードウェアを販売しているので、コスト削減のためにこうしたサプライチェーンをよく知っておく必要がある」と述べている。エヌビディアは追加関税を部分的に自社でまかなえるが、利益には影響が出るものと見ている。
この投資家はまた、「半導体は世界規模でかなり分業している業界で、どの国も国内だけで回転することはできず、『全サイクルの国産化』はあり得ない」とも付け加えている。
エヌビディアは最新の関税策について反応を示していない。ただファン氏は、今年のGTCサミットでサプライチェーンにおける関税の影響ついて触れた際に、「エヌビディアのサプライチェーンは全世界に及び、台湾、メキシコ、ベトナムなど多くの国や地域に生産拠点や市場がある」と述べている。
ファン氏はまた、「関税による企業の生産への当面の影響は、何が製造されるか、何がアメリカで購入されるか、また製品の最終目的地はどこか、など様々な要因に左右される。また、どの国が関税の対象となるかにもよる」と述べている。
これらの要因を総合的に見て、当面は業績見通しや財政面に極端な影響は出ないとファン氏は見ているが、長期的に見れば現地での製造がこうした変化へのポイントとなるとも述べている。エヌビディアは今年、サプライチェーンに関わる国や地域における製造力の強化を目標としている。
一方のTSMCは、アメリカへ投資を拡大すると発表しているが、アナリストによるとアメリカは今の半導体生産体制では需要を満たせないという。

TSMCの張氏は以前に、「アメリカのアリゾナ州に工場を建設せざるを得なくなった際、グローバル化は『ほぼ絶望』となった」と述べていた。また、台湾での半導体製造における最大のメリットは仕事熱心なエンジニアがいることで、社員が夜中の12時に電話を受けて寝床を這い出し現場に向かうこともしばしばあるという。
またエヌビディアのファン氏は以前、様々な場で「半導体のサプライチェーンは非常に長く複雑で、世界各地に及び、中国は世界的に重要な位置に存在している」と語っていた。
Gartnerのアナリストであるロジャー・シェン氏は、「半導体のサプライチェーンは極めて複雑で、どの国も整備することが非常に難しく、ほとんどの国が部分的に自給自足できる程度だ」と述べている。アメリカが製造を国内へシフトしようとしてはいるが、このプロセスは長く険しいものとなると見ている。
半導体の製造拡大を狙うアメリカは2022年以降、助成金や税の減免、融資、補助金支給などで計4000億ドル以上をつぎ込んでいるが、TSMCも含めた受託メーカーの現地での工場建設は思うように進まない。今年の初めにTSMCの工場がようやく操業に至ったが、本格生産をするにはまだ程遠い状態である。
(中国経済新聞)