2025年6月26日、香港特別行政区の蔡若蓮(ツォイ・ユェクリン)教育局長は、米国における高等教育政策の突然の変化、いわゆる「ハーバード事件」に関連し、香港の8つの公立大学がこれまでに約850件の転校に関する問い合わせを受け取り、そのうち36名に対して正式な入学許可を出したことを明らかにした。
入学許可の内訳としては、香港大学が最多の16名、次いで香港科技大学が15名、香港中文大学が3名、香港嶺南大学が2名となっている。香港大学の張翔(チャン・チョン)学長によれば、同大学は米国情勢の不透明感を受け、米国から約300件の問い合わせと100件超の転校申請を受け取っており、その中にはハーバード大学の学生も含まれているという。

香港科学技術大学キャンパス
問題の発端は、6月初旬に米国のトランプ前大統領がハーバード大学に対する留学生ビザの制限措置を発表し、同大学の外国人学生の入国を停止する大統領令に署名したことにある。この措置は国家安全保障を名目としたものだが、ハーバード大学は即座に訴訟を起こし、裁判所がその執行を一時停止している。
蔡局長は「事件発生直後、香港政府は迅速にハーバード大学香港同窓会と連絡を取り、影響を受けた学生への支援を表明。香港内の大学に協力を呼びかけた」と語った。
香港の大学側も迅速に対応を開始。特に香港科技大学は、ハーバードの在学生および合格者の受け入れを表明し、転校希望者への入学審査、単位認定、ビザ支援、宿泊手配などを優先的に対応すると発表した。香港城市大学も特別奨学金の提供や、元指導教授による共同指導の制度を導入するなど、実務的な支援体制を整えている。
香港は、世界大学ランキング上位100位に5大学が入る唯一のアジア都市であり、英語による授業と自由な学問環境が高く評価され、海外からの留学生にとって魅力的な学びの場となっている。さらに、アジアと西洋をつなぐ「スーパーコネクター」としての地理的・制度的な優位性も、国際高等教育拠点としての発展を後押ししている。
蔡局長は「香港の大学は高い学術的実力と研究基盤を持ち、世界の優秀な学生と教員を惹きつける力がある。各大学が協力して『Study in Hong Kong(留学香港)』ブランドを育てていくことを期待している」と力を込めた。
なお、香港では2024/2025年度から非本地(非香港籍)学生の受け入れ上限を20%から40%に引き上げているが、申請数の増加スピードには追いついていない。多くの大学が、今年の非本地生からの出願件数が過去最高を記録していると報告している。
蔡局長は「中国本土、台湾、マカオからの申請は依然多いが、特に欧米を中心とする海外からの申請が前年の倍以上に増えている」と説明。また、行政長官の李家超氏も5月末、「必要に応じて非本地生の受け入れ枠をさらに拡大することも検討する」と述べた上で、「米国で差別や不公平を経験している留学生は、香港がその受け皿となる」と歓迎の意を示している。
(中国経済新聞)