4月6日、香港特別行政区の財政司司長・陳茂波氏は自身のブログで、「香港は引き続き自由港として、自由貿易政策を堅持し、貨物・資金・情報などの自由かつ円滑な流れを保障していく」と強調した。この発言は、米国が中国に対して34%の「対等関税(Reciprocal Tariff)」を課すことを発表し、それに対抗して中国政府が同率の関税をアメリカ製品に課すと発表した直後に行われたものである。
香港は中国の一部でありながら、「一国二制度」の原則の下で独自の経済・貿易政策を持つ「単独関税地域」として運営されている。香港基本法によれば、特別な事情を除き、香港では輸入関税が課されない。そのため、今回の中国本土による報復関税措置にも香港は追随しない方針を明確にした。
これは、香港が自由貿易の中心地としての役割を維持することを意味する。実際、香港では米国製品を含むすべての輸入品に対して関税を課しておらず、さらに消費税や付加価値税も存在しない。そのため、中国本土で34%の関税が課されるようになれば、米国製品の価格差が拡大することが予想される。この「価格差」は、内地(中国本土)から香港への越境ショッピングを促進する要因となる可能性がある。
実際、過去にも為替差や税制の違いから、香港は「購物天堂(ショッピングパラダイス)」として中国本土の観光客を惹きつけてきた。今後も、米国製化粧品、電子機器、健康食品などに対する購買ニーズが高まり、越境購買行動の活発化が予想される。
一方で、アメリカ側の姿勢は必ずしも香港に優しいものとは言えない。米国のトランプ大統領が署名した行政命令では、香港とマカオは「対等関税」の対象外とはされておらず、中国本土と同様に扱われることが明記されている。この方針により、香港からアメリカに輸出される商品にも同じ34%の関税が課せられることになる。
これは、香港が「迂回ルート」として利用され、米中間の貿易制裁の抜け穴となることを防ぐ意図があるとみられる。米国側は、香港経由での税回避や製品の再ラベル化(原産地偽装)を防止するために、中国本土と同様の措置を香港にも適用する方針を強めている。
こうした米中間の貿易摩擦の激化の中で、香港は自らの立場をいかに維持し、国際社会からの信頼を保てるかが今後の大きな課題となる。自由港・単独関税地域というステータスは、香港の経済的優位性の柱であり、それを支える制度と透明性の維持がより一層重要となっている。
(中国経済新聞)