去年末ごろからの「杭州六小竜」の人気上昇を受け、今年の政府活動報告で「新しい技術、製品、場面の大規模な利用へモデル行動を実施」との方針が示された中国で、2、3月ごろからロボットの利用が急速に広まっている。
4月6日、山東省泰山の文化観光団体の責任者によると、1月末にロボットスーツ10台を導入して以来、SNSで利用申し込みが相次いでいるという。現在は100台近くまで増えており、今後も数を伸ばして5月の大型連休までには500台に達する見込みである。レンタル料は時間または歩行距離に応じて計算され、3時間で80元(約1600円)、紅門から中天門までも同じく80元である。
ロボットスーツは、軽量化され装着ができる電動機能を持つ装備で、センサーによって人体の意思を感知し、即時にアシスト力を計算して装着者の主要部位に力を送り込むことで、体の負担を軽減するものである。泰山の自然や文化の中心となる紅門から玉皇頂には7000段以上の石段があり、中天門から南天門までの山道は徒歩で約3時間かかるが、ロボットスーツを使えば所要時間がほぼ半分になる。
ロボットスーツは3月以降、いずれも観光名所である河南省三門峡の霊宝漢山、河北省保定の白石山、寧夏自治区銀川の賀蘭山などでも導入されており、安徽省の黄山、陝西省の鬼谷嶺、江西省の上饒霊山なども導入予定と発表されている。

このところ登山関連のテーマ活動を続けている四川省の峨眉山では、険しく長い山道での体力消耗を避けるため、ロボットスーツの実証実験を始めている。「歩いて峨眉山を登る」ことの面白さや味わいを深めてもらおうと、万年寺付近や雷洞坪から金頂までの道のりでの利用を計画している。峨眉山は去年、のべ621万人が訪れ、このうち7%余りが全行程を踏破したという。ロボットスーツが導入されればより多くの客足を招くことができそうである。
浙江省温州市にある雁蕩山では、清明節連休を前にした3月31日、待ち望んでいた人型ロボット1台とロボット犬5台が届いた。眺望レストランで客と対話をし、写真を撮り、驚きの声が上がる中でしっかりと「天空の橋」を歩き通している。
雁蕩山の観光当局責任者は、「ロボット導入策」について、
1.大竜湫や霊峰などの主要スポットやライブ配信で人型ロボットやロボット犬を応対や出し物に利用して、写真を撮り、握手や声掛けをさせる。
2.音声でのやり取りやダンス、太極拳、お茶のもてなし、登山の同行などの特定機能を加えて、より楽しく観光してもらう。
3.人気ドラマ「琅琊榜」や「神雕侠侶」の撮影地であることから、仙人や任侠者にちなんだロボットIPを制作して一連のテーマイベントやミニドラマ、スタジオを発表し、ロボットIPを勢ぞろいさせる形を目指す。
という3ステップの計画を練っている。

湖南省張家界の国立森林公园や湖北省恩施の大峡谷などでは、人型ロボットやロボット犬がダンスや逆立ち、バック転を披露したり、観光客と握手したりするなどで人気を集めている。
3月末に四川省成都市で行われた文化観光発展大会では、宇樹科技(ユニツリー)のロボット「G1」が紹介された。ニーズに合わせて機能が付加されており、観光地である青城山-都江堰で近々導入され、多言語による観光地の説明や観光案内、パフォーマンスを披露するという。運河で有名な北京市通州区では現在、安全性を点検するための4輪ロボット「小雨」のテストが行われている。道を横切り柵から水辺に寄ろうとする人を見かけると近づかないように注意を促すほか、煙の出所や火元の確定ができるサーモグラフィーカメラも備える。また樹木に対し、病虫害に犯されていないかを見て健康状態を判断することもできる。さらに緊急事態に見舞われた際、肩のあたりにある「SOS」ボタンを長押しすれば係員と通話ができる。
観光市場では今、デジタル技術に精通した「デジタル先住民」でIPへの関心度や取り込み意欲が強い「Z世代」が主力になりつつあり、従来の楽しみ方を大きく変えようとしている。アウトドアが売り物である江西省萍郷市の武功山は、訪れる人の90%が若者である。
武功山の観光団体によると、ロボットスーツやロボット犬、人型ロボットの導入や発注をしているほか、テクノロジーと自然の限りない共存を探り、すべてをインターネットでつなぐ観光世界を創造すべく、様々なロボットやドローンなどのメーカーを誘致しているという。また、「サイバー登山」を体験して現場でテクノロジーを評価してもらうための観光客も招いている。
(中国経済新聞)