2025年、中国政府の目標

2025/03/28 10:58

第14期全国人民代表大会(全人代)第3回会議の開幕式が5日午前9時、北京の人民大会堂で行われ、李強総理が国務院を代表して政府活動報告を行った。そのポイントは以下の通り。

(1)2024年の取り組みの成果

国内総生産(GDP)成長率5%

食糧生産量が初めて7億トンという新たな大台に

都市部新規雇用者数1256万人

新エネルギー車の年間生産台数が1300万台突破

(2)2025年の主要目標

GDP成長率5%前後

都市部新規雇用者数1200万人以上

消費者物価指数上昇率約2%

食糧生産量約7億トン

単位GDPエネルギー消費量の削減率約3%

(3)2025年の重点的取り組み(一部)

【財政】

赤字率4%前後、赤字規模は前年比1兆6000億元(1元は約20.6円)増加

【政府投資】

地方政府特別債4兆4000億元(前年比5000億元増)、新規政府債務総額11兆8600億元(前年比2兆9000億元増)

【特別国債】

超長期特別国債1兆3000億元(前年比3000億元増)、特別国債5000億元発行

【消費】

消費てこ入れ特別行動を実施。超長期特別国債3000億元で消費財の買い替え支援

【新たな質の生産力】

商業宇宙開発や「低空経済」(低空域飛行活動による経済形態)など新興産業の安全かつ健全な発展を推進。バイオマニュファクチャリング、量子テクノロジー、エンボディドAI、6Gなど未来産業を育成。製造業のデジタルトランスフォーメーションを加速。ICV・新エネルギー車、AIスマホ・PC、スマートロボットなど次世代スマート端末及びスマート製造装備を大きく発展。

【教育】

高校教育修了学位提供拡大、就学前教育の無償化を段階的に推進

【市場環境】

企業への支払い遅延問題を解決する長期的に有効な仕組みの確立。企業関連法執行適正化特別行動を実施。

【開放】

インターネットや文化分野の秩序ある開放を推進、通信・医療・教育分野で開放の試行事業を拡大。

【住宅】

不動産市場の下げ止まりと安定化の促進への注力を継続。「城中村(バラック地域)」の老朽・危険住宅の改修に注力。「存量商品房」(中古または所有権証明書取得済みの分譲住宅)の買取を推進。「保交房」政策(住宅引き渡し保証政策)を引き続きしっかりと実施。

【農村振興】

種苗業振興行動を深く実施。中央政府統括下で食糧生産販売地への省を跨ぐ利益補償を開始し、食糧生産量の多い県への支援を強化。農民の所得増加のためのチャネルを拡大。

【都市化】

条件を満たす農業転移人口(農業を止めて都市部に出た人)の住宅保障制度への組み入れを推進。アーバン・リニューアルと都市部の老朽住宅地の改修を持続的に推進。

【環境】

グリーン消費インセンティブ・メカニズムを整備し、グリーン・低炭素の生産・生活様式の形成を推進。

【雇用】

大学卒業生など若年層の就職ルートを拡大。フレキシブルワーカーや新雇用形態労働者の権利・利益保障を強化。技能人材の待遇向上。

【医療】

「医薬品集中購入政策」(国または地方政府が医療機関を取りまとめ、共同購入の形で一定の調達量を確保し、製薬企業と価格交渉を行うことで、取引量を確保する代わりに価格を引き下げる政策)を十全化し、品質の評価・監視・管理を強化。住民医療保険と基本公衆衛生サービスの1人あたり財政補助基準額をそれぞれ30元、5元引き上げる。

【社会保障】

都市・農村部住民向け基本養老金(年金)の最低基準額をさらに20元引き上げる。出産支援策を策定し、育児手当を支給。

経済分野の6つのキーワード

今年は「第14次五カ年計画(2021-25年)」の最終年であり、さらなる改革の全面的深化にとって重要な1年でもある。今年の全国両会における経済関連の焦点やホットワードにはどのようなものがあるのだろうか。

■キーワード(1)「第14次五カ年計画最終年」

今年は第14次五カ年計画の最終年であり、次の五カ年計画も間もなく発表される。今年はこれまでの計画を受けて次の計画を始める重要な節目となる。

今年の全国両会では、政策がさらに効果をあげるようにし、第14次五カ年計画の目標・任務の質の高い達成を推進し、第15次五カ年計画の良いスタートを切るための基礎を固めるかが、各界の注目点となるだろう。

■キーワード(2)「消費促進」

2024年12月に開かれた中央経済政策会議が決定した2025年に重点的に取り組む9つの課題では、「力強く消費を促進し、投資効益を高め、内需を包括的に拡大する」ことが最優先事項とされ、「消費促進特別行動」の実施方針も打ち出された。

複数の業界関係者は、内需拡大は長期的な戦略措置で、その中でも消費促進は最優先課題であると考えており、今年の全国両会では「消費促進」が議論の焦点の1つになると予測する。

■キーワード(3)「AI+」

今年に入り、中国発の大規模AIモデル「DeepSeek(ディープシーク)」が、オープンソースモデルとコスト優位性を活かして、急速に国内外で熱い注目を集めている。百度(バイドゥ)、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)、字節跳動(バイトダンス)などの企業も、次々と自社の大規模AIモデルやAIアプリケーションに関する新たなアクションを発表している。

分析によると、企業の新たな進展はAIの革新的な発展の新たな動向を示しており、2024年の政府活動報告に「『AI+』行動の実施」が盛り込まれたのに続き、今年の全国両会でも「AI+」が引き続きホットトピックになることが見込まれる。

■キーワード(4)「中長期資金の株式市場への参加」

障害・障壁をさらに取り除き、中長期資金の株式市場への参加を力強く促進することは、資本市場投融資総合改革を深めるための重要な施策だ。先般、中央金融委員会弁公室や証券監督管理委員会などが共同で、中長期資金を株式市場へと呼び込むための「中長期資金の市場参加促進に関する実施計画」を通達した。

今年の全国両会では、「中長期資金の株式市場への参加」が注目点の1つになる見通しだ。

■キーワード(5)「民間経済」

民間経済は中国式現代化の推進における新戦力であり、質の高い発展の重要な基盤だ。最新統計によると、中国では民間企業が企業全体の92%以上を占め、国家ハイテク企業に占める割合も92%以上にまで拡大している。

先ごろ開催された民間企業座談会では、「民間経済の健全な発展と質の高い発展の促進」という重要なメッセージが発信された。業界関係者は、今年の全国両会でも「民間経済」が重要なホットワードの一つになると見ている。

■キーワード(6)「過度な競争の是正」

国家市場監督管理総局は先ごろ、公正競争に関する座談会を開き、企業7社のトップと「閉鎖的環境における過度な競争」の是正について踏み込んだ意見交換を行った。北京市、江蘇省、湖南省なども最近、「過度な競争」の是正に向けた取り組みを次々に始めている。

専門家によると、中央経済政策会議で「過度な競争の包括的な是正と、地方政府や企業の行為の規範化」が打ち出されたことを受け、部・委員会(省庁)や地方政府は「市場環境の改善、短期的利益の追求による過当競争の防止」という鮮明なメッセージを発信しており、今年の全国両会では過度な競争の是正の道がさらに探求されることになると見られる。

(中国経済新聞)