20世紀末から使用が始まった手術支援ロボットが今、医学の様々な分野で大きな成果を挙げている。公開データによると、世界では「ダ・ビンチ」だけで1万台近く利用され、症例数は合計1600万人以上となっている。
北京大学第一医院臨床医薬品試験機構の副主任で、泌尿外科の副主任医師である範宇氏は、「ロボットの立体的なアームや3Dによる視野の拡大で、今の手術は外科医の『目の負担』や『手の震え』人間の物理的なボトルネックなどが解消され、特に小さな空間で細かな動きをする際に効果抜群だ」と指摘している。
フロスト&サリバンの予測では、手術支援ロボットは今後世界的に急速に普及し、中国の市場規模は年平均36.9%の割合で成長して2030年には709.52億元となるという。
手術支援ロボットの普及に際し、人工知能(AI)や機械学習が大きな力となっている。CT画像で誘導されたAIが腎部分切除や肝部分切除をするなど、過去の大量のデータや今の情報を分析することで外科医に的確なアドバイスができるようになっている。
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医療分野におけるAIは今、診断支援から意思決定のサポートへと発展しつつある。業界の専門家によると、手術について2025年には執刀前の計画、執刀中のナビゲーション、執刀後のモニタリングについてAIの利用が一段と進むという。これらのシステムは患者の図像学データ、既往歴、即時の生理的数値をまとめるもので、医師の意思決定をトータルサポートする。
執刀前の計画については、患者の図像学データ(CT、MRI、エコーなど)を詳しく分析することで患部の位置を速やかに見分け、病状の範囲を定めた上、高精度な立体解剖モデルを生成する。これにより、医師が患者の病情を可視できるようになるほか、手術の手順をシミュレーションして危険性のある部位を予測し、最適な執刀方法を定める。
AIはまた、教育や研修についても重要な役割を発揮する。新型のシミュレーターとAR(拡張現実)やVR(バーチャルリアリティー)を結び付けることで外科医に対しバーチャルでのトレーニング環境を与え、オペレーションスキルが向上する。教育の効率アップが果たせる上、より多くの医師が質の高い教育を受けられるようになり、内科医や外科医の不足という世界的な問題の緩和につながる。
またAIの支援システムは、手術中の画像分析という大きな役割も担う。アルゴリズムの深層学習により主な解剖組織を見分け、医師が重要な血管や神経を避けられるようになる。手術の安全性が高まる上、所要時間も短縮され、合併症の発生も抑えられる。範氏は、「現在、臨床活動においてAIと機械学習はまだ開発段階にある。ARの一部、あるいはVRは、執刀中のつなぎ合わせやナビゲーションについてある程度の力を果たし、操作の難易度や誤差を軽減することができる。ただしAIが終始誘導するというレベルには遠く及ばない」と述べている。
AIは手術支援ロボットで広範囲な活躍が見込めるが、「意思決定の透明性や釈明性をどう確保するか」「AIの決定ミスによる問題をどの程度防げるか」といった解決すべき重要な内容が存在している。
フロスト&サリバンによると、手術支援ロボットの全世界における市場規模は、2017年~2021年は年平均25.2%の割合で成長しており、2021年~2025年は同じく27.1%の割合で成長して2025年は285億ドル、2030年には619億ドルとなると予測している。
デジタル医療は現在、様々な好機や課題に直面している。AIや5Gネットワーク、IOTなどが普及することで、リモート手術や個別化医療、スマート健康管理など、新たな傾向が広まっている。
(中国経済新聞)