中国で、リリースから10日以上が経過した人気ゲーム「黒神話:悟空」が、今でも「神話」を描き続けている。
データ分析会社「VG Insights」によると、「黒神話:悟空」は8月27日の時点で販売数が1540万本、売上高は7.3億ドル(約1096億円)以上であり、これまでの売れ行きは同じく人気ゲームの「エルデンリング」「サイバーパンク2077」「ホグワーツ・レガシー」を超えている。
この人気でゲーム市場に巨大な「経済効果」が発生しており、ゲームパッドやゲームマシンからPC用グラフィックボード(GPU)、ハードディスク、ディスプレイ、あるいはコーヒー、eスポーツ系ホテルなど、様々な分野で「ブーム」を巻き起こしている。
1本のゲームが産業全体に「現象級のブーム」を発生させたことで、ゲームの商業価値が本体から延伸した各種の産業にまで及び、消費が促されるという「ゲーム経済学」が実証されたことになる。
公式発表によると、「黒神話:悟空」は、PCに装着するGPUについて、最低スペックはNVIDIAの GeForce GTX 1060またはAMDのRadeon RX 580とされている。しかし、AAAクラスのハードコアプレーヤーからすれば、ゲームをする以上はハイスペックでないと気が済まないものである。
よって、このゲームで主人公の「天命人」を目指すプレーヤーが増えていることで、まずGPUの売上増をもたらしている。リリース元から最高レベルのスペックとされているNVIDIAのGeForce RTX407が数を伸ばし、RTX 4060 Tiや4060シリーズの売上も急増している。
アプリ「什么値得買」では、8月14日~20日のPC付属品の販売量はその前週より48.8%増加しており、うちGPUのGMVは60.6%増であった。また京東では、ゲーム用GPUの全取引額は前年比200%以上増え、中でも七彩虹の共用GPU「黒神話:悟空」はたちまち完売となっている。
このことから、出費を抑えようと何年もスマホを買い替えていない多くのゲームプレーヤーが、1本のゲームのために3000~5000元をはたいて新品のGPUを購入するという妙な現象が出ている。
こうした衝動的ともいえる行為は、販売側の営業行為にそそのかされたものではなく、それだけの価値があるものということが着実に見て取れる。
「黒神話:悟空」では、GPUのスペックによって画面効果がまるで違うものになる。初心者クラスのGPUでは、映し出される物の輪郭が時折りとぎれとぎれになり、「どうにか楽しめる」程度である。しかしハイスペックのGPUでは、画面が一段とスムーズに流れる上、水面に映る逆さ像や砂粒の細かさ、森の中に差し込む木漏れ日のラインやまばゆさなど、細部にわたった表現が可能となる。
ゲーム業界の従事者はみな、AAAクラスこそが「王冠に載る宝石」と見ているが、かなりの投資や開発期間が必要であることから、手を付けようとしない人が多い。しかし今回の「黒神話:悟空」の人気ぶりで、シングルプレイヤーゲームが有望であることが分かった上、付属品やマシン、GPUの売上も招いて、ゲームが「9番目の芸術」と言われる所以を改めて感じた人もいた。
「黒神話:悟空」の大ヒットは、6年間の積み重ね、そして西遊記と中国の文化的背景を持ち寄った大作であることによりもたらされたものであるほか、ゲーム以外の様々な分野で経済効果をもたらす上、産業の成長の種をまくものにもなっている。
(中国経済新聞)