世界的に中国便の運休相次ぐ 今後もさらに増えると思われる理由は

2024/08/23 12:30

オーストラリア、イギリス、ブルネイなどで複数の航空会社が今年5月以降、相次ぎ北京便や上海便などの運休を発表している。ドイツやフランスは今のところ様子見の状態である。

イギリスの航空最大手「ブリティッシュエアウェイズ」(British Airways)は8月8日、10月26日からロンドン-北京便を少なくとも2025年11月まで運休すると発表した。その後に再開するか状況を見て判断するという。

BAは、コロナ禍による3年間の運休を経て2023年6月に再開したロンドン-北京便について、「特に重要な路線の一つ」と称していた。1980年の開通から44年間存続しており、中国の改革開放を見つめてきた路線となっている。しかし、再開からわずか1年余りでまたも運休することになってしまった。

また、イギリス第2の航空会社である「ヴァージン・アトランティック」(Virgin Atlantic Airways=VS)も7月、10月26日からロンドン-上海便を運休すると発表した。期間は「無期限」という。同社で唯一の中国便であり、コロナ禍で運休したのち2023年5月に運航再開を果たしていた。

なおVSは2022年に、ロンドン-香港便の廃止を発表した上、30年近く運営してきた香港の事務所を閉鎖している。

さらにオーストラリアのカンタス航空(QF)は、9か月前に運航再開したばかりのシドニー-上海便を7月28日から運休している。

また東南アジア・ブルネイのロイヤルブルネイ航空(Royal Brunei Airlines)も、週に2往復運航している北京直行便を10月27日から運休することにしている。

これらはいずれも、乗客が少なく採算が取れないことが一番の理由である。BA、VS、QFは、中国の観光需要が予想ほど回復していないと表明している。

このため各社とも、中国便を取りやめ、アメリカ、日本、シンガポールなど搭乗率の高い地域へ輸送力を振り向けざるを得ない状況となっている。

また、運休しないまでも機体を小型化している航空会社もある。UAEのエミレーツ航空(Emirates)は、北京便と上海便のすべてをエアバスA380から一回り小型のボーイング777-300ERに切り替えている。

さらに、ヨーロッパの航空会社が中国便を運休する理由として、ロシアの上空の飛行が不可能になっていることも挙げられる。ロシアはウクライナへの軍事侵攻を始めた2022年2月から、EU、イギリス、アメリカ、カナダなど36の国や地域に対しロシア上空の飛行を禁止している。

このためヨーロッパ各社は経路変更を余儀なくされ、飛行時間が増えて燃料費がかさんでいる。

一方で、ロシアと同盟関係にある中国の航空会社は迂回する必要もなくロシア上空を飛べるので、時間やコストの面で大きく差をつけている。

また飛行時間が増加したことで、労働時間の上限規制の影響で各社とも機長や乗組員の交代要員確保のため増員が必要となっている。BAやVSは中国便について、機長の人数をそれまでの3人から4人に増やしている。

業界内では、北京-ロンドン便における航空会社別のコストを比較した場合、中国以外の会社は25%~30%割高になると見ている。

ヨーロッパの航空会社はみな、ロシア迂回によるコスト問題を抱えている。ドイツのルフトハンザ航空は以前に、「中国の会社がロシア上空を飛べるので我々の収益が落ちている」と抗議したほか、エールフランスやオランダ航空などは、このまま迂回措置が続けば存続が難しくなる可能性もある。

一方で中国の航空会社は、欧州勢の苦境をしり目に国際線を続々と開通させている。

オーストラリア便で言えば、

・2024年6月、北京首都航空が杭州ーメルボルンの直行便を週に3往復開設。

・同じく6月、中国東方航空(MU)が南京ーメルボルンの直行便を同じく週に3往復開設。

・中国南方航空(CZ)が、2024年11月から広州ーパースの直行便運航を再開すると発表。

・キャセイ航空とCZが今夏にアデレード便の運航再開を予定。

となっている。

このような動向を受け、航空会社間の市場シェアに変化が生じている。中国-ヨーロッパの路線は、コロナ禍前は中国の会社が52.7%、海外が47.3%と大差なかったが、今年上半期は中国が70%以上を占めるに至っている。

ただし、中国は各社とも輸送力がだぶついている。2023年は利用者数がコロナ禍前まで回復していない中、旅客機の数が増え続け、年末の時点では2019年末より368機多い4013機となっている。

機体の数が増えながらも旅客の数が元に戻らない中、国内市場での「つぶし合い」が悪化して国内便のチケット代や収益に響くような事態を避けるべく、国際線に望みを託すようになっている。

MUは今年7月、上海—ウィーン便を開設しようとしたが、オーストリアは「国内の航空会社はロシア上空が飛行できず、MUに対し劣勢に立たされている。開通してしまったらトータルで見て利益が出なくなってしまう」との理由で拒否した。

MUはまた、スイスのチューリッヒとイタリアのミラノを結ぶ便の開通も目指している。業界内では、ヨーロッパ各国がいずれもオーストリアのような策を講じる可能性も排除できないと見ている。

中国は、経済関係が緊密になっている中東各国とを結ぶ直行便を新たに開設し、中東の航空各社も中国便を設けている。

今年5月、バーレーンの「ガルフ・エア航空」が上海および広州とを結ぶ定期便を開設しており、中国から中東へ渡航する際の選択肢が増えた。

日々空を行きかう飛行機は、各国の政治の緊密度や力の入れ具合が示される存在となっている。

(中国経済新聞)