ベトナム、中国企業における海外展開の重要拠点に TCLがグローバル供給網の中心に据える 

2024/08/7 07:30

ベトナムのホーチミン市のシンボルともいえるthe Landmark81(ベトナム最高層ビル)で2024年7月30日、TCLのグローバル化25周年記念式典が行われた。

TCL は、25年前の1999年にはベトナムで無名の存在であったが、今やサイゴン川のほとりにあるホーチミン市最大の広告版を占領するまでになり、「where the dream begins」(夢の始まる場所)というキャッチコピーを刻んでいる。

この式典の前日、ホーチミン市のある大型家電販売店では、寸法は数十インチから100インチ、型番も様々なTCL製テレビが商品として陳列された。TCLは今、ベトナムで、テレビの販売台数がサムスン、LGに次ぐ位置のトップグループにあり、2023年のテレビ事業におけるマーケットシェアは14.4%となっている。

ベトナムほか東南アジアでのTCLの活躍ぶりは、製造の現地化が功を奏したものである。1999年に現地企業であるルックスの工場を買収して支社を設け、グローバル化への第一歩を踏み出した。今は事業規模を常に拡大しており、TCLインダストリーズや子会社の通力、茂佳科技などもベトナムに製造拠点を設けている。

この中で、2019年に4500万ドルをかけてビンズオン省に建設したTCL智能電器は、従業員数が2000人以上でTCLのテレビの重要な生産基地となり、内部装置の製造や成型、モジュールの組み立て、バックパネルの製造など全工程の生産ラインを設け、生産能力は年間700万台以上である。

ただしTCLは、テレビ1台の製造コストについて、ビンズオンでの生産分と中国広東省の生産分がほぼ同じである。ベトナムは、人件費はやや安いが仕入れ費用が高く、部品の一部は中国から輸入しなくてはならい状態である。

それでも貿易摩擦が絶えない中、関税が高額であることから、ベトナムは今でも多くの中国企業にとって海外の重要拠点となっている。TCLのビンズオン工場があるベトナム南部は東南アジア最大のディスプレイメーカー集結地であり、サムスン、璨宇、ハイセンス、兆馳(AMTC)、恵科(HKC)、京東方(BOE)などが立地し、この中で規模はサムスンがトップ、TCLが2位である。

中国・インド・ベトナム電子(携帯電話)企業協会のまとめによると、ベトナム南部はTVを中心とした家電産業の集結場所となり、ホーチミン、ドンナイ、ビンズオン、ヴンタウなどに各社が立地し、TVの年産能力は2年以内に4000万台に達するとのことである。

BOEは今年4月にベトナムのバリア=ヴンタウ省で、海外では初となる工場の建設を開始した。同社の陳炎順会長は「ベトナムは海外事業の重要拠点となり、今後は新工場を頼りに世界での取り組みやサービスを強化していく」と述べている。

TCLは今、ベトナム、インドネシア、インド、パキスタン、ポーランド、メキシコ、ブラジルの7か国に製造拠点を設け、東南アジア、南アジア、ヨーロッパ、北米、南米などでの生産体制を敷いている。2023年には製品売上高のうち海外分が半分近くに達し、テレビの販売台数は世界2位の2526万台となっている。

東南アジアの中でも経済成長の著しいベトナムは最近、中国の製造業にとって人気の場となっている。電池メーカーのサンオーダは7月15日、子会社の香港欣威電子を通じて、民生機器向けリチウムイオン電池の製造工場を運営する会社を設立すると発表した。投資額は最大20億元で、民生用のバッテリーセル、SiP、電池を生産する予定である。

またベトナムは、風力発電や水力発電の資源に恵まれていることから、太陽光発電企業における一番の進出先となっており、晶澳科技、隆基緑能、晶科能源、天合光能など各社が直接投資または買収により工場を建てている。

また自動車メーカーでは、BYD、奇瑞、長城汽車がベトナムでの工場建設を発表しているほか、領克(Lynk)、上汽GM五菱なども現地でEVの売り込みに取り組んでいる。

こうした中、TCLもグローバル化への取り組みでベトナムを第一の座と見なし、地域での重要な製造およびサプライチェーンの軸としている。ビンズオン工場で造られた製品は、ベトナムほかASEANのニーズに応えるだけでなく、80%以上がアメリカに輸出されている。

TCLのベトナム工場は、こうして全世界へと広がる製造拠点となり、グローバル化事業における主要な部分になっている。

(中国経済新聞)